喫煙者と非喫煙者は対立してはいけない

これまでも自治体で受動喫煙対策が検討されると、医師会をはじめとした「完全禁煙派」と、同中央会のような業界団体の「分煙派」は互いの主張を述べ、議論がかみ合わない時間を費やすような場面が何度も見られた。とりわけ、医療界の論客は、あたかも紫煙をPM2.5と同列になぞらえたり、喫煙を犯罪行為のような例えをすることもあった。前出の伊東事務局長は語る。

「もし、たばこの害が本当にそれだけあるのなら、大麻並みに法律で禁止する議論を堂々としてくればいい。しかし、それはしないで、喫煙者を隔離するだけの方策を取ろうとする。社会は多様性を認める方向に進んでいるのに、たばこに関しては徹底的な封じ込めを試みる。これは弱い者いじめにしか見えません」

しかし、法案提出に向け、厚労省は2月9日、自民党厚生労働部会で案を提出したものの、委員から異論が噴出した。ある衆院議員秘書はこう語る。

「喫煙によって健康を害するリスクが高まるのは事実です。しかし、完全にがんになるエビデンス(証拠・根拠)は認められていません。にもかかわらず、五輪を盾にして事実上の禁煙社会をゴリ押ししようとしている」

さらに、厚労相経験者の議員秘書は、経済的見地からこう言う。

「こんな法案を通したら、疲弊している地方の経済は壊滅的な打撃を受ける。一方の論理だけを振りかざして、いい社会になるわけがない」

医学的に見ても、経済的に見ても性急な法案で、同部会では9割以上が反対意見だったという。同部会は15日にも開催され、同中央会など7団体が意見を述べる。果たして、着地点は見つかるのか。赤坂で署名をした女性はこう語る。

「あまりきつく規制するのはどうかと思います。お互いリラックスできる環境ができればいいのではないでしょうか」

喫煙者と非喫煙者が互いに対立するのではなく、歩み寄って共存できる工夫や努力が必要ではないのだろうか。それは、規制強化では決して生まれるものではない。喫煙者のマナーも今以上に厳しく求められてしかるべきだろう。

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