いかに刺客を放つか――小池陣営の戦術とは
「13年は、当時の状況を振り返ればアベノミクスの絶頂期。09年は自民党が下野する直前の絶不調期で、民主党(現・民進党)に人気が集まっていたというよりも、自民党への不信感が頂点を極めていた時期です。小池都知事の人気の継続有無の影響はありますが、どちらかというと都議会自民党への不信感の大小が投票動機になるでしょう。さらに、現有議席数の多い自民党はメンバーを代えることができず、一部で高齢化も見られます。これから候補者を選定できる小池陣営の仕掛けが重要」(渡瀬氏)
では、小池陣営はどのような手を打ってくるのだろうか。
「千代田区をはじめとする『当選者が一人』の選挙区では、自民党以外の会派が統一候補として刺客を放つことが何よりも大事です。70歳を超える男性の候補者には、若くて清潔感のある女性を対抗馬として擁立していくのが一人区制の基本セオリー。実質的に一対一の闘いとなれば、メディアの報道も過熱し、心配されている投票率も上がるでしょう」(同)
当選者が複数いる選挙区での戦術はどうだろうか。
「小池都知事は新党を立ち上げることに否定的な考えを繰り返しています。これを額面どおりに受け止めれば、選挙では『知事推薦』という形で小池塾塾生、公明党、民進党、そして自民党の一部に『お墨付き』を与えるのではないでしょうか。楽観的な予測でも、小池塾生だけの当選者で都議会の過半数を握るのは困難。小池陣営は、公明、民進、自民の一部との大連立を構想していると思われます。そうなれば状況は一変。選挙に勝てそうな候補であれば、『勝利ファースト』で幅広く多数の擁立が可能になるのです」(同)
対する都議会自民党に生き延びる方法はあるのだろうか。
「ある程度減ることは予想しているでしょうから、官邸を使ってこれまで以上に公明に接近しておくことです。豊洲問題をめぐって共産党は小池都知事にエールを送っており、不信任案や百条委員会の設置に協力が得られるかが不透明になってしまいました。都議会選挙終了後に小池都知事を叩き潰すには、自公で過半数の勢力がなんとしても必要です」(同)
ここで気になるデータがある。それは橋下大阪市長率いる大阪維新の会が自民党大阪府連と激突したケースだ。それまで大阪で根強い人気を誇っていた民主党が、維新と自民の対決がクローズアップされるあまり、注目されなくなり、壊滅状態になってしまったのだ。
都議選でも、民進党をはじめ、諸会派、無所属議員が割を食うのは間違いない。
小池vs都議会自民の対決も思わぬ余波を生むかもしれない。(文中敬称略)