再雇用希望者をフルイにかける

私たちは何歳まで働けるのか――。政府は、高年齢者が年齢にかかわりなく働き続けることができる生涯現役社会の実現に向け、65歳までの安定した雇用を確保するため、企業に「定年制の廃止」「定年の引上げ」「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じるよう「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」で義務付けている。

同法に基づき、厚生労働省が毎年6月1日現在の高齢者雇用状況を企業に報告させたのが、「高年齢者の雇用状況」だ。早速、2016年版で高齢者雇用の現状を見てみよう。

報告の対象となっているのは、従業員が31人以上の15万3023社。このうち、高年齢者雇用確保措置(以下、雇用確保措置)の実施済企業の割合は99.5%となっている。仕事内容や賃金、待遇などを気にしなければ、ほとんどが65歳までは働くことができる。

しかし、雇用確保措置として採られている「定年制の廃止」「定年の引上げ」「継続雇用制度の導入」制度間には、大きな差がある。

実施されている雇用確保措置の割合は「定年制の廃止」が2.7%、65歳以上の定年と規定している「定年の引上げ」が16.1%、定年年齢は65歳未満だが継続雇用制度の年齢を65歳以上としている「継続雇用制度の導入」が81.3%となっている。つまり、継続雇用制度の導入が圧倒的に多くなっている。ただ、これらの制度には落とし穴も多い。

例えば「定年の引上げ」は、前述の16.1%のうち65歳定年の割合は14.9%、66-69歳は0.1%、70歳以上は1.0% (四捨五入で誤差アリ)となっており、定年が引き上げられていると言っても、詰まるところ、法的な義務がある65歳まで雇用しているに過ぎない。

「継続雇用制度」も同様で、前述の81.3%のうち「希望者全員65歳以上の継続雇用」の割合は55.7%、無条件ではなく、企業が何らかの基準を設けて継続雇用を認める「基準該当者65歳以上継続雇用(経過措置適用企業)」が25.5% となっている。

これも、「定年の引き上げ」と同様に、詰まるところ65歳までの雇用でしかない。希望者全員が66歳以上まで継続雇用されるのは、雇用確保措置を行っている企業全体で66~69歳は0.3%、70歳以上は4.5% となっている。70歳以上とは、つまり70歳が定年と考えればよいだろう。

実はこの基準該当者というのがクセ者で、継続雇用制度を採用している企業全体では、継続雇用された人の割合は82.9%、継続雇用を希望せず定年退職した人の割合16.9%、継続雇用を希望したが継続雇用されなかった人の割合は0.2%だが、うち、基準該当者継続雇用制度を採用している企業に限れば、継続雇用された人の割合は(基準に該当し引き続き継続雇用)90.0%、継続雇用を希望しなかった人の割合は7.7%、基準に該当しない人の割合は2.3%となる。継続雇用を希望しても雇用されない割合が、基準該当者継続雇用制度を採用している企業では継続雇用制度を採用している企業全体の10倍以上に跳ね上がることになる。

基準該当者継続雇用制度が採用されている企業においては、「企業がいかようにも継続雇用の基準を作れることで、企業側が継続雇用したくない従業員を事実上、篩(ふるい)にかけることができる」ということだ。