最後まで切れなかった反社会的勢力との関係

房園は天才的な営業マンだった。62年、鹿児島県南さつま市生まれで、近畿大学工学部経営工学科を卒業後、大学大手マンションデベロッパー「大京」に入社し広島支店に配属された。その後、同社最年少課長となり、その営業術は今でも伝説だ。大京の営業は業界でも有名な個別訪問で、絨毯爆撃と称される。1軒1軒虱潰しに訪問し、1軒数千万円のマンションを売り込むのだ。靴底は減るが、契約は取れないと他の営業部員が苦しむ中、すぐ頭角をあらわした。

マンション購入をためらわせるのは今も昔もローンの負担額である。収入が不足してしまう夫婦に、房園は専業主婦がローンの不足分を補える1日数時間のアルバイト情報を携えては、戸別訪問を繰り返した。契約後も、職場を変えたいという主婦たちの相談にも快く乗り、新しいアルバイト先を紹介し続けた。

客が何を望み、何に悩むか。そうした客に対し、房園の営業は個別具体的だった。アーバンが軌道に乗った後も、客が何を望み、何を求めているか。それに対し、こちらが何を具体的に提供できるかという、房園の営業は変わらなかった。

たとえば、業界をアッといわせた東京・北青山の中古物件のリフォームがある。売りに出ていたのは築39年10階建てのオフィスビルで、20数社の入札の結果、最も高い値段で落札したのがアーバンだった。他の業者すべてがマンションへの建て替えだったが、アーバンのみがオフィスへの転用を提案したのだ。築年数が古く、容積率が今の半分しかないビルのオフィスへの転用は無理だろうと、アーバンの試みを冷ややかに見ていた。

房園が考えたのは、1階辺りの高さを確保し、容積率を上げるために各階ごとにフロアを取り払うやり方だ。最新のデザインを導入し、階高のオフィスを探していたIT系企業をテナントに迎えて商業ビルに変えた。大阪・梅田にある通称「アップルビル」も同様だった。アップル社が大阪での旗艦ビルを探しているとの情報を掴むと、同社に営業をかける一方、生保が所有していたビルを外資系証券会社から購入し、全面改装を施して、同社に提供した。客のニーズをいち早く掴み、求めるものを提供する営業法だ。

しかし、才溢れる房園が率いるアーバンがなぜ破綻し、追い込まれたか。

反社会的勢力との関係に尽きる。反社会的勢力の地上げ屋を手先に使っていたことが明らかとなって倒産したスルガコーポレーション(以下、スルガ)。スルガが地上げした土地をアーバンが購入したことで、メーンバンクのみずほ銀行から「反社会的勢力と関係あり」と烙印を押され、徹底した融資引き揚げにあった。これ以来、資金繰りは一気に行き詰まる。

金融界に吹き荒れる反社会的勢力、略して「反社」の嵐は一向にやみそうにない。いったん認定されれば、スルガ、アーバンのようになるのがいい例だ。
 だが、「風説の流布」もどきの情報を株式市場に流すことで、儲けている仕手集団がいることを忘れてはいけない。

「反社」とは何を指し、誰が認定するのか。これらが不明なまま「反社」という言葉だけが独り歩きし、リスクを取りたくない銀行の闇雲な融資引き揚げに手を貸している。火のないところに煙は立たないという。しかしながら、アーバンの場合、メディアなどで指摘された火種は存在していた。