ホリエモンは世の中の不合理を見つけて最短距離で何とかする人
【田原】ところで、出澤さんから見て堀江貴文氏はどういう男でしたか。
【出澤】世の中の不合理な点を見つける嗅覚は天才的で、そこに対して最短距離で何とかしようとチャレンジする人でした。
【田原】彼はライブドアで何をやっていたのですか。
【出澤】新しいサービスを見つけてくる目利きの部分ですよね。堀江さんはエンジニアあがりだから、技術のことがよくわかっている。そういう視点で新しいものを見つけてきて、「これいけそうだからやろうよ」と現場におろしてくる。まさに創業社長だったと思います。
【田原】会社の絶頂期に、ライブドア事件が起きて堀江氏が捕まった。僕は前から堀江氏をよく知っていてね。本当は、堀江氏は事件とあまり関係ないですよね?
【出澤】そうだと思います。
【田原】出澤さんは、あのころのライブドアをどう思ってた?
あの頃のライブドアは、非常に激しい成長痛が起こっていた
【出澤】中から見ても、非常に激しい成長痛というか、いろんな不合理が起こっていて、管理職として何か違和感はありましたね。現場は目の前の仕事をこなすことに終始していて、目線は上がらない。一方、ライブドアの経営陣はいろんなことに挑戦していくから目線がどんどん上がる。そこでギャップができて、下は上のことを理解できなくなっていく。それを説明するのが管理職の私の役目でしたが、溝が埋まるどころか、どんどん深まるようなところがあって……。目線の高い新しい幹部が次々に入ってきたこともあって、組織の二重化が起きていたかもしれません。
【田原】余計な話だけど、僕は堀江氏が選挙に出なければライブドア事件はなかったと思う。あれで検察に目をつけられた。事件のあと、ソフトバンクの孫正義さんも「次は俺だ。検察に目をつけられているからおとなしくしなきゃ」と言ってましたよ。
【出澤】実際に裁判として確定したものを見ると、当初報道で言われていたようなおどろおどろしいことはほとんどありませんでした。もちろん罪は罪です。ただ、通常ではない感じはあったのかなと思います。
ライブドア事件の影響は大きかった
【田原】事件の後の2007年に、出澤さんがライブドアの社長になる。事件の影響はどうでしたか。
【出澤】レピュテーション(評判)は最悪でした。広告のお客様はすべて離れてしまったし、かわいそうでしたが、社員が不動産を更新できないということまで起きました。でも、逆にユーザー数やページビュー数は伸びていたんです。もともとサービスが良くて使いやすかったし、事件が起きてアクセスが集中したときでもサービスが1回も止まらなかったという技術力の高さは評価されていましたから。
【田原】2010年にライブドアがNHN Japanに買収されます。これは経営が苦しかったからじゃない?
【出澤】違います。事件が起きたときライブドアは現金がたくさんあったし、弥生やセシールなど非常に優秀な子会社がありました。ところが、事件でライブドアの解散価値より売り込まれてしまった。そこに目をつけたのが外資系ヘッジファンドで、上場廃止してみると、彼らの持ち分が50%を超えていました。ポータルサイト事業は赤字でしたが、1年で黒字化して再建に成功。価値が高まったところで外資系ファンドが売りに出して、NHN Japanが買ったという流れです。
【田原】買収されて、ライブドアはNHN Japanになったのですか。
【出澤】いえ、会社は別です。当時はグループに大きく3つ会社がありました。1つはハンゲームをやっていたNHN Japan。そして、検索事業や「NAVERまとめ」などのサービスをやっていたネイバージャパン。そこにライブドアが加わってグループ3社です。しばらくこの体制が続いて、買収から2年後に3社で経営統合。2013年にLINEを含むWebサービス事業を切り出して、LINEという会社ができました。
【田原】NHN Japanは韓国の会社ですよね。僕みたいな古い人間は、日本の会社が韓国の会社に買収されるということに驚くのですが、出澤さんたちの世代は違和感なかった?
【出澤】どうでしょうか。正確にいうとNHN Japanの親会社が韓国の会社という形ですね。当時はいろいろ言われましたが、ビジネスは結果がすべてを証明します。実際にいまLINEという大きなサービスができて、われわれグループで約4000人いて、国籍問わず多くの仲間が働いていることを考えれば、どこの国かということは重要ではないのかなと思います。