Lでも2でもない「B」の意味
Bレンジに入れると、Dレンジに比べて回生ブレーキの効きが強まる。上手く使えば、アクセルを踏むと加速、放すとブレーキというワンペダル運転に近い使い方ができる。最近ではこの回生ブレーキをプリウスのBモードよりはっきり強く効かせるクルマも増えており、こうしたクルマではかなりワンペダルでの運転が可能になっている。例えば最近出たばかりの日産ノート e-POWERやテスラ、BMW i3などは、デフォルトの設定のまま、アクセルオフでブレーキペダルを踏んだ時と同様に減速することができ、減速Gを計測してブレーキランプを点灯させる制御まで行っている。
プリウスのBレンジはこれらの仕組みの先祖のようなものだ。現在の最先端からすると減速Gは小さいが、アクセルペダルのオフで回生ブレーキを作動させるという考え方のハシリとも言える。
Bモードでは、アクセルを踏んでいる限りはDとほぼ変わらない。ギヤが低い訳ではないので、そのまま最高速度まで加速することができる。だから、ギヤ比を下げて固定してしまうLレンジとは、意味も仕組みも違うのだ。つまり、Bレンジは従来のLでも2でもない。運転者にとって、BとL・2はアクセルオフ時の運転感覚が似ているので、もちろん「Bという表示が紛らわしい」という批判は一理あるのだが、両者は本質的に違うものなのだ。
プリウスのBレンジとは何か。それはDレンジのコースティングの副産物である。エコを追求していこうと思うと、従来のプロトコルでは越えられない燃費の壁があり、そこを越えるために、アクセルをオフにしても空走させる必要があった。そのためには既存の操作スキームを変えざるを得なかった。それは技術の進歩に伴うクルマの変化だと思う。もちろん「安全に関わることだから分かりにくいのはダメだ」という意見もあるだろうが、一方で環境問題を放置していいのかという話でもある。Bレンジの存在は、一筋縄では行かない問題なのだ。
「自動ブレーキ」が問題を解決する
最後にもう1つ。最近のクルマは「ぶつからない」技術が進化している。レーダーやカメラで前後の安全を確認し、誤発進だと認識すればアクセルを踏んでもクルマが動かないような自動ブレーキの仕組みが、新型車には次々と搭載されている。
少子高齢化が進む日本で、高齢者ドライバーの誤発進による事故は放置できない問題だ。しかしこれは、もうしばらくすれば解決すると筆者は考えている。