Bモードが紛らわしい?

もう一つ、この議論の中でしばしば出てくるのが「プリウスのシフトパターンは独特で分かりにくい」という意見だ。特に多くの人にとって見慣れない「B」がいつも問題になる。大抵の場合、旧来のAT車(トルコン・ステップAT)のLまたは2に該当すると思っているようだ。だから「バックのBと混同しやすいBを表示に使うのが間違っている。なぜLや2と書かないのか」と主張する人が出てくる。

では、この「B」とは何か? Bの表記は「(エンジン)ブレーキ」から来ている。プリウスは変速機のみならず、動力源そのものが他のクルマと大きく違う。普通のクルマであれば、エンジンの回転を変速機が減速し、駆動輪に伝える。アクセルをオフにした時、同じ速度でもギヤが低いと、運動エネルギーで回される駆動輪の力で、エンジンが余分に回されて強いエンジンブレーキが得られる。旧来のATではLや2がこの「低いギヤ」に当たる。

しかし、プリウスのBモードは、仕組みが全く違うのだ。トヨタのハイブリッド車は、アクセルオフで回生ブレーキが作動する。回生ブレーキとは、車両の運動エネルギーで回される駆動輪が発電機を回して発電させ、エネルギーを回収してバッテリーに蓄える仕組みだ。

プリウスでは、低燃費を実現するためにD(ドライブ)レンジでアクセルオフにした時に、この回生ブレーキがあまり効かないようにしてある。「コースティング」と言って、アクセルをオフにした時に回生ブレーキであまり減速Gを発生させず、比較的無抵抗に空走する様に仕立ててあるのだ。これがトヨタ型ハイブリッド車の低燃費の大きな柱になっている。

しかし、長い下り坂でエンジンブレーキが効かないと物理ブレーキがフェード※してしまうので、Bレンジを別途設ける必要がある。これだけ見るとLレンジと変わらないが、大きく違う点がある。

※フェード……坂道を下るときなどにブレーキを踏みっぱなしにすると、熱を持って効かなくなること。

プリウスは最も普及したハイブリッドカーであり、かつ日本でもっとも売れているクルマでもある。