写真家だからこそ観客の頭に残る映画ができた

【野地】今回、インタビューとカメラを回しているのは日比さんじゃないんですか? 最後の編集、フィルムと写真、あれは日比さんですか?

写真家であり、ドキュメンタリー映画『健さん』の監督の日比遊一氏(右)とノンフィクション作家の野地秩嘉氏

【日比】インタビューは僕が全部書きましたし、99%は自分でやっています。編集も全部立ち会いました。

【野地】『健さん』を見て僕が一番いいと思ったのは、実は写真と動画を組み合わせているところ。権利の関係でフィルムが制限されていたのかと思いますけども……。

【日比】やっぱり、僕が写真家だったっていうことがすごく助かったと思うんですね。ほかの人だったら、(フィルムが使えないという)選択になったときに、自分事で恐縮なんですけども、やっぱり、うまくできなかったと思いますね。

【野地】動画だけの編集と写真だけの編集、両方の才能があること。実は、日比さんの一番の技術だと僕は思いました。それと、あのスパニッシュギターで写真がいっぱい出るところも、好きです。

【日比】ああ。実は、野地さんの書いている本からちょっと僕は学ばせていただいたんです。偶然、今、レスペ(映画「健さん」の配給会社)で上映している『パコ・デ・ルシア』(スペインの著名ギタリストを題材にした作品)という映画もありますけど……

【野地】高倉さんはパコ・デ・ルシアが好きだったんですね。

【日比】ええ、そうですよね。どこかで入れられないかっていうことで、全部聴きましたよ。もう、撮ってるときもね、ずっとヘッドホンで。最初から僕は、あそこでインスピレーションを受けて、それであのテンポのいい曲が一番僕の中で残ったものですから。僕が1964年生まれなんですね、ちょうど。だから、新幹線だとか、東京オリンピックだとかっていうものを入れつつ。だから(『健さん』の中で)映画評論家の川本三郎さんにも、ガイダンス的に質問でああいうことをおっしゃっていただいたのは、パコ・デ・ルシアのああいうのもちょっと頭の中にもうあったものですから、すでに。