配偶者手当は子ども手当化か、廃止へ
ちょっと労務に詳しい人であれば、「それなら、130万円を収入上限にすればいいじゃないか」と考えるかもしれません。130万円とは、これ以上の年収になると社会保険料が発生する金額で、「130万円の壁」とも呼ばれています。先ほどの人事院の調査でも、配偶者の収入制限額として103万円に次いで、約26%の割合で130万円を上限としています。
ところが、今年10月より従業員数501人以上の企業においては、社会保険の加入要件が改定され、年収で約106万円(月額8.8万円)以上、にまで拡大されることになりました。数年後には、500人以下の企業にも適用されるでしょう。すると、130万円という基準も根拠をなくしてしまいます。
要するに、収入に制限を設けて配偶者に家族手当を支給していくことが、極めて困難になっていくのです。
そこで、企業がとるべき手段は大きく2つ。
1つ目は、子どもに対する手当に振り替える方式。トヨタ自動車は、2021年までに家族手当のうち、扶養配偶者への月1万9500円を廃止し、子ども1人あたり月5000円だった手当を2万円に増額する決定をしました。支給対象者のうち、子どもが2人以上の世帯や、子どもが1人でも共働き世帯にとっては増額となります。
2つ目は、配偶者への手当を止めてしまう、という選択です。場合によっては、いっそ子ども分も含めて、家族手当を廃止する会社もあるでしょう。「子ども」といっても、就学中の18歳もしくは22歳までといった年齢基準が一般的ですが、高校生や大学生だけでなく、「浪人生は?」「大学院生は?」「語学留学は?」「無認可の専門学校生は?」「フリーターは?」「ニートは?」など、さまざまな子どもが増えています。
また、夫婦共働きの場合、子どもをどちらの扶養とするのか。昔なら「そりゃ、夫に決まっている」ということだったでしょうが、妻のほうが高収入かもしれませんし、夫の会社に家族手当がなければ、「子どもは妻の扶養」としたほうがお得です。