ちゃんと言える? 爆買い下火の原因

そして、不思議なことはホテル業界以外にも起こっています。

訪日外国人、とくに中国人が昨年に比べ大幅増加しているにも関わらず、百貨店の売上高が前年比で数%程度減少しています。中でも、宝飾品や高級時計の売上げが前年比で7%程度落ちているのです。また、一部の家電量販店も大きく客単価を落としています。昨年までは大騒ぎだった「爆買い」が下火になっているということです。

しかし一方、化粧品や小さな魔法瓶などの家電製品に比べて、価格が安いものはいまだに大幅に売上げが伸びています。

それにはもちろん理由があります。

ひとつは、以前は1人民元=20円程度まで人民元高(円安)が進んでいたのが、現状では15~16円程度です。以前に比べ2割以上、日本で買うものの値段が上がっているのです。転売目的で電気釜を5つとか買っていた人が、内外価格差が縮小し、転売メリットがなくなったために、日本での家電製品などの購入を抑えているのです。

さらには、中国当局は宝飾品や高級時計などの関税率を30%から60%へと大幅に引き上げました。多くの訪日中国人が使う銀聯カードの海外での現金引き出し上限額を、1日1万元(約16万円)、1年で10万元(160万円)に制限したのです。

これした措置にはもちろん背景があり、そこをきちんと理解しておくことが大切です。まず、中国の外貨準備(政府、中央銀行が保有する外貨)がピークの4兆ドルから直近では3.2兆ドルまで、激減と言っていいほど減っていること。

中国経済の減速により、人民元が売られ、それを防衛するために、中国政府が外貨準備を使って、外貨を売って元を買う介入を続けてきたからです。当然、民間人の海外での外貨使用にもとても神経質になっているのです。

中国はここ20年ほどの急成長で、多くの国民も豊かになりました。それにより訪日客も増えているのですが、ここにきて中国経済の大きな潮流の変化があることも私たちは決して見逃してはいけないことです。いろんな現象から、その本質を掘り下げていくことが大切ですね。

経営コンサルタント 小宮一慶(こみや・かずよし)
1957年生まれ。京都大学法学部卒業後、東京銀行入行。86年米ダートマス大学経営大学院でMBA取得。帰国後、経営戦略業務などに携わったのち、岡本アソシエイツ取締役就任。96年小宮コンサルタンツ設立。企業経営の助言の他、講演や執筆も。最新著は『松下幸之助 パワーワード ―強いリーダーをつくる114の金言』(主婦の友社)、『小宮一慶の1分で読む!「日経新聞」最大活用術 2015年版』(日本経済新聞出版社)、『No1コンサルタントが教える 20代の後悔しない働き方』(青春出版社)、『一流に変わる仕事力』(中経出版)など。
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