宮本武蔵は、最晩年に己が剣の奥義をまとめた兵法書に『五輪書』というタイトルを付けた。これは、その名のとおり5つのパートに分けられていて、順に「地之巻・水之巻・火之巻・風之巻・空之巻」と名付けられている。仏教の教えで「世界の5大要素」とされる「地・水・火・風・空」になぞらえたわけだ。

もっとも、内容に“仏教くさい説教じみた匂い”は全くない。どこまでも「戦いのノウハウ」を記した書である。そもそも武蔵の人格に仏教的なところはない。