職場では、上司や部下といった立場の違いで、意識のすれ違いが生まれやすい。だが、そうした問題を簡単に解決できる「行動の仕組み」がある。

低評価の部下こそ操縦するチャンス

人事考課制度を「悪」とみなす上司は多い。「本当は評価なんかしたくなかったのに、会社の人事考課制度に従って評価を低くつけたら部下のやる気がなくなった」というグチをよく聞く。確かに部下も、自分が評価されていないと感じたらやる気を失う。最近は自己肯定感の低い若者が多い。一度「どうせがんばっても駄目だ」とあきらめてしまうと、立ち直れないのだ。

でも実は人事考課という仕組みは、うまく使えば「上司が部下にやる気を出させるための仕組み」に転換できる。人事考課で低く評価された部下は、「人間としての自分が低く評価された」と思いがち。だがそこで「そうじゃない。人事考課とは君がやった仕事の結果に対する会社の評価だ。会社の期待にどう応えたかをデータ化した、単なる『仕組み』なんだ」と説明する。

会社も自分たちも「仕組み」の中で動いているということを、ちゃんと伝えればいいのだ。

今期の仕事を、社内の仕組みに沿って評価した結果がこうだというだけのこと。部下の人間性は関係ない。上司と部下がチームとして力を出し合い、次期に結果を出せばいい。また説明の場で「具体的には、ここについてはこうしてほしいんだ」と指示することで、部下を自分の意図通りに動かしやすくなる。

部下に低い評価をつけたときがアドバイスのチャンスであり、その部下を操縦するチャンスなのだ。「自分だって低い評価はつけたくないし、もちろん君も高い評価のほうがいいだろう。だから次期は、会社の求めるこれをやってほしいんだ。そうすれば君の評価は上がる。一緒にがんばろう!」と説けば、部下も必ず納得する。その訴えに説得力を持たせるためには会社の制度をよく知っておく必要があるが、その「ルール」さえつかめば、自分が会社でどう働けばいいかも見えてくる。個人、部下、チームとしての自分の部署の目標もはっきりしてくる。

(澁谷高晴=撮影)
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