政治生命賭ける“3度目”の前原氏
さて、今回の代表選で注目すべきは、かつて民主党代表を務めたこともある前原氏がどのくらいの票を獲得するかという点である。というのも、今回の代表選はある意味で前原氏の政治生命を賭けたものといえるからだ。
前原氏は2005年9月の郵政選挙の敗退の責任をとって岡田克也代表が辞任した後の代表選を菅直人元首相と争い、わずか2票差で勝利した。中学2年生の時に父親を亡くしたことを演説で語り、どんな境遇でもやる気があればチャンスをつかめる社会を作りたいという前原氏の主張が、聞く者の胸を打ったのだ。
だが翌2006年4月、前原氏は「偽メール事件」の責任を取って早速代表を辞任する。出所不明のメールを安直に「本物」と断定する脇の甘さが原因となったのだ。
ただ、その反省が生かされているとはいえない。2011年8月の代表選では、出馬の意向を示した松下政経塾の先輩・野田佳彦元首相と、いったん「応援する」と約束しておきながら、「あなたでは勝てない」と前言を翻して自ら出馬。しかしながら74票しか獲得できず、野田氏の102票に及ばなかった。
敗因は、この時も演説で亡き父親の思い出をアピールしたことだ。前原氏は“2匹目のドジョウ”を狙ったつもりだろうが、同じ話では感動は生まれなかった。前原氏の演説への会場の反応はイマイチで、「ドジョウ演説」を行った野田氏が勝利している。
そして3度目の代表選出馬となる今回、対抗馬は政治キャリアが自分よりも浅い。それだけに、前原氏にとって以前のようなボロ負けは許されない。
「党内で2・3位連合を企てる動きもある。蓮舫氏、前原氏に加えて玉木氏が出馬し、第1回目の投票で誰も過半数を制することができないという場合だ。第2回目の投票で前原氏と玉木氏が手を組み、蓮舫氏を負かすという筋書きだ」
ある政治部記者が教えてくれたこのストーリーは、一部の元維新の党系の議員が抱く構想だという。23人のメンバーを抱える同グループは8月31日に自由投票を決定し、玉木氏の出馬の可能性を高めている。同時に玉木氏が前原氏の票を喰う可能性も否定できず、前原氏にとっては悩ましい側面もある。