日本経済は近い将来、インフレに転換する可能性が高い。インフレとはモノの価値が上がり、通貨の価値が下がることだから、資産を現金で保有していたのでは価値がどんどん目減りしてしまう。日銀は低金利政策などの金融緩和を続けながらのインフレ転換を目指しているから当分金利上昇は見込めず、預貯金に預けていてもインフレ負けしてしまうだろう。

そこでインフレから資産を守る手段としては株式投資が有効なことは、オリックス シニア・チェアマン 宮内義彦氏、SBIホールディングス社長 北尾吉孝氏が認めている。株価は景気を先取りして動くため、脱デフレの兆候が見え始めたいまのような時期から株式投資を始めれば価格上昇による利益が望める。

ただし、どのような銘柄でも値上がりするというわけではない。インフレ銘柄と呼ばれる銘柄がいいだろう。代表的な業種でいえば金融と不動産だ。銀行は資産デフレによる保有株式や保有不動産の値下がりに苦しめられていた。アベノミクス以降は上昇に転じているが、インフレ転換によって保有資産の価値が上昇すれば、さらなる株価上昇圧力となりそうだ。不動産の分野では、地価上昇が期待できる大都市圏の物件を多く保有する大手不動産会社がインフレ銘柄として注目を集めている。

しかし個人投資家、それも初心者が個別銘柄を物色するのは難しい。そこで年金基金などの機関投資家が好む銘柄を先回りして買うという手がおすすめだ。年金基金といえば国民年金と厚生年金の資金を運用管理するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式シフトが注目を浴びた。2014年度の運用状況を見ると、運用結果は15兆2922億円の黒字となり、自主運用を開始した01年度以降で最大の運用益を得た。年金基金は債券収入が多いというイメージだが、運用益の主な内訳を見ると低利回りの国内債券は1兆5957億円にとどまり、国内株式が6兆9105億円、外国債券が1兆8884億円、外国株式が4兆7863億円というように株式から大きな収益を挙げた。

年金基金はGPIFのほかに地方公務員共済組合連合会などの公的年金、厚生年金基金や確定拠出年金などの私的年金があり、GPIFに匹敵する資金を運用している。これらの大型基金も株式の組み入れ比率を高めるとみられている――といっても機関投資家銘柄の詳細が公表されているわけではないから、機関投資家の利用を想定した指数であり、ROE(自己資本利益率)の高さを銘柄選定基準に加えた「JPX日経インデックス400」(JPX日経400)に組み込まれた銘柄から選ぼう。構成銘柄は東京証券取引所のHPで公開されている。機関投資家が好む銘柄は長期保有が前提になるので、個人投資家も証券会社で確定申告が不要な特定口座(源泉徴収あり)を開設したうえで、非課税のNISA枠を利用して長期投資を目指すとよい。

しかし、それでも銘柄選定に自信がない、面倒だというのであれば投資信託をおすすめする。日本株の上昇に懸けるというのであれば、日本株投信から選ぶ。日経225インデックスやTOPIX(東証株価指数)に連動する値動きを目指すパッシブ型と呼ばれるインデックスファンドの多くは購入時に支払う販売手数料がゼロで、保有期間中負担する信託報酬も低く抑えられている。株式と同じようにリアルタイムの値段で売買できるETF(上場投資信託)もいい。JPX日経400に連動するETFも購入できる。

インデックスの値動きとは無関係に値上がりを目指したいのであればアクティブ型の日本株投信がいい。投信は証券会社と銀行で、ETFは証券会社で購入できる。

オリックス シニア・チェアマン 宮内義彦
1935年、神戸市生まれ。58年関西学院大学商学部卒業。60年ワシントン大学大学院経営学部修士課程修了。2014年より現職。総合規制改革会議議長など数々の要職を歴任。
 
SBIホールディングス社長 北尾吉孝
1951年、兵庫県生まれ。74年、慶應義塾大学経済学部卒業。同年、野村証券入社。92年、事業法人三部長。95年、ソフトバンクに転じて、常務取締役に就任。99年より現職。
 
(尾関裕士、永井 浩=撮影)
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