3年生の太田琢巳さんは山形県出身。高校生のときに学生消防隊の存在を知り、山形からオープンキャンパスに参加。そのうえで、入学を決めたという。

「イベントなどは事故が起きないよう準備するのが大変。でも、やりがいがあります。将来は地元で消防官になりたい」

公務員就職はどの大学でも考えるところだ。とはいえ、ほとんどの大学は養成コースや就職支援を実施しても、かけ声倒れに終わっている。

放水訓練の様子。

放水訓練の様子。

そんな中、千葉科学大は設立わずか7年にもかかわらず、2009年は24人が消防官となっており、全国4位の実績を誇る(大学通信調べ)。消防官就職者数ランキング上位30校において新設10年以内の大学はほかにない。

ひとつの理由は銚子という地の利だろう。筆者は拙著『最高学府はバカだらけ』(光文社新書)で同大についてこう触れた。

「日本で唯一の危機管理学部を設置。防災システムなどを学ぶが、銚子という立地でどこまで」

執筆時は、都心から離れた立地では受験生集めで苦戦すると見ていた。だが、櫻井准教授は「だからこそ教育がしやすいのです」という。

銚子には警察、消防のほかに海上保安庁(銚子海上保安部)もある。同大では消防では06年から、警察では08年から、海上保安庁では10年からインターンシップを派遣している。3機関すべてでインターンシップを実施している大学は、全国でもおそらく同大だけだ。

「これが都心にあれば他大学と競合していて難しかったでしょう。銚子だからこそできたのです」(櫻井准教授)

偏差値こそ振るわないが、それは受験生が立地で敬遠しがちだから。田舎の学校だからと侮ると、かつての筆者のように判断を誤ることになるだろう。

※すべて雑誌掲載当時

(永井 浩、浮田輝雄=撮影)