いいこと尽くめの改革に踏み切れない理由
とまあ、いいこと尽くめのはずですが、なかなか踏み切れない企業が多い。その理由は滅私奉公文化で育った人間が上司であるということでしょう。上司は部下と常に顔を合わせていないと不安だし、特に「労働時間を今までより減らす」ことは経営者には大英断です。かなりのパラダイムシフトを迫られているのです。
これが今日本の女性活躍推進に起きている流れです。
さて、「資生堂」に話を戻します。「働き方改革」といっても資生堂のような現場の営業、それも女性中心となると、柔軟に場所や時間にとらわれず働けない。また商業施設全体の閉店時間にあわせるので、資生堂の美容部員だけが先に帰るわけにはいかない。
アパレルなど、女性の対面営業が主力という職場は、どこも同じ問題を抱えるでしょう。正社員の対面営業を大量に抱えてきた資生堂が一番最初に直面しているだけなのです。ある大手アパレル経営者が「イオンなど大型ショッピングモールが10時閉店になってから人員配置が大変」とこぼしていました。
「女性中心のキラキラ職場」にも限界がきているということです。
デパートも20時閉店、駅ビルなども22時閉店。シフトで遅い時間に入れる人が必要になるし、土日も出てほしい。
人件費の安いアジアでは夜中まで大型モールが開いていることは珍しくないのですが、日本でもアジアの観光客に対応するなら、都会は今後どんどん閉店時間が遅くなる可能性があります。
シンガポールのカジノがあるモールは、12時近くまでブランド店があいていて、驚きました。
ヨーロッパでは、もともと休日は厳格に守られていたので、EUになってから日曜にパリのデパートも開店し「フランス人も働くようになった」と驚いたものです。しかし24時間買い物できる便利な町にはなりそうもない。
ヨーロッパのようにすべての人のWLBを大切にして、日本も「便利な24時間社会」をあきらめるのか? それともインバウンドを意識して、徹底的に不夜城となっていくのか?