限界を乗り越えるには?
もし24時間の便利な買い物を選ぶなら、今後「日本人の若い女性」社員だけでまわす職場は早々に限界となります。
資生堂も「遅いシフトに入る社員」というカテゴリの助っ人がいるそうですが(学生アルバイトなど)、そうした代替要員を増やしたり、遅い時間や土日シフトに入る人は明確に「高い賃金」で差別化していくしかないでしょう。時給=ベビーシッター代よりは上、または時給がベビーシッター代ととんとんでも、将来的に投資する価値があると社員が思えば、シフトに入るでしょう。
FJの資生堂ショックイベントでも「育児中でも全部の土日や夜が出られないわけではないので、夫に育児を担当してもらったりして、その人に合わせて、入れる日を作っていく」ということでした。
その際にFJのイクボス講習をされている方が「夫との交渉マニュアルも作ってあげた方が親切」と言っていました。
夫との交渉材料としてはやはりお金です。ふと気になってサイトで美容部員の給与をみてみると、事務職女性などよりは高い。(いろいろな採用に仕方があるようですが)これだけの報酬を持って、夫と交渉することは十分可能ではないでしょうか?
土日のシフトに月2回は入ればこれだけお金になる。または職階があがれば増収になるなど、明確な報酬の増加は交渉材料になるはずです。
人手不足の時代、給与の低い介護業界は、「いくら施設を増やしても、人員確保ができず開業できない」となるそうです。
アパレルや宝飾、美容部員など、キラキラした業界にもいずれ同じ問題が起きるようになるかもしれない。
女性だけのキラキラ職場という考え方自体を変えていくのも一つの解決法です。外資ブランドなどは男性の美容部員が接客してくれます。日本人の平均年齢は45歳ぐらいですから、お客も年配です。当然年配の元美容部員を呼び戻すという選択肢もあります。
また対面販売が集客の要というのも、すでにネットショッピングの時代としてはどうなのか? ネットと対面と両輪は必須で、対面の比率を減らしていくこともあるかもしれません。
将来はペッパー君のようなロボットも助っ人に入るかもしれません。
若手女性だけの職場から「ロボット、ネット、男性、年配女性、外国人」など、多様性のある職場へと転換していく可能性もあります。
最後に……地方では資生堂の正規社員の美容部員は、女性の安定雇用です。貴重な女性の稼げる仕事がなくならないよう、ぜひ資生堂にはがんばってほしいと思っています。
少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授
東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。講演、テレビ出演多数。経産省「女性が輝く社会のあり方研究会」委員。1億総活躍会議民間議員。著書に『女子と就活』(中公新書ラクレ)、共著に『妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング』(講談社+α新書)など。最新刊1月5日発売『専業主夫になりたい男たち』(ポプラ新書)。