「なぜ、あなたが介護できないの?弱いのねえ」
夫の両親を自宅で介護していた五十嵐和子さん(仮名、61歳)は6年前、家族会議で今後の介護について話し合っている最中、義妹から思わぬ言葉を投げかけられた。
「なぜ、あなたが介護できないの? 弱いのねえ」
義父母はともに認知症で、食事や排泄など日常生活のすべてに介助が必要だった。和子さんの疲労はピークに達し、有料老人ホームへ入居させたいと相談したときだった。数千万円の入居一時金は親の蓄えで十分に賄える。夫も義父母も入居に前向きだったが、義妹の反発は強かった。「親の財産が減ることが気にいらなかったのでは」と、和子さんは当時の様子を思い起こす。
最後は夫が義妹を説得してくれたが、この出来事を機に和子さんも自らの老後を考えるようになった。
「できるだけ自宅で過ごし、判断力が衰えたら介護施設へ入りたい。子どもにも希望を伝えています」
このように、親がどんな介護を受けたいのか、費用面も含め、元気なうちに意向を聞いておきたい。切り出すタイミングが難しいが、五十嵐さんを担当するケアマネジャーの菅美穂子さんは「介護を特集するテレビ番組も多いので、そうした機会に話し合ってみては」と、勧める。
(取材協力=アンティ・ケア/菅 美穂子、ナイスケア/水下明美)