そんな折井さんに声をかけてくれたのは隣の職場の課長だった。
「飛行機も人間も滑走期間が長いほど高く飛べる。いまは高く飛ぶための滑走期間だと思って頑張りなさい」
そう思って、単純に見える仕事にも真剣に取り組むことで、後々仕事に役立つことを身につけていった。そして入社2年目、小さな商品から、念願の開発業務を担当するようになった。
「私にとって商品開発の原体験となる“心に刻まれる失敗”が起きたのはその頃です」
全国発売の新しいタイプのワインを担当したときのこと。商品の企画を考えに考えて、当時、大阪にあったデザイン部にボトルのラベルデザインを依頼した。ラベルデザインは、社内コンペで採用作が決められる。先輩と相談してプレゼンの日を2週間後に設定し、デザインの依頼書を大阪へ送った。
「書類が届いた日、ワインのデザインを担当するリーダーの方から電話がかかってきたんです。『2週間で描けるようなものではない! 安易に考えてもらっては困る!』と、震え上がるほど、本気で叱られました」