道路公団の民営化に関しても、道路公団は日本が金のない時代に高速道路をつくるために時限立法でできた組織だ。時限立法の期限はとっくに切れて、本来なら存在自体が問われなければならないはずなのに、民営化によって所有権が日本国から株主に移ってしまうため、国民の手を離れて未来永劫続く組織になってしまった。

かくのごとく小泉時代の民営化論議というのは、すべてアジェンダ(取り組むべき課題)が間違っていた。郵政民営化が争点になるはずがないのだ。

また、一昨年の参院選挙では、「年金選挙」と言われて民主党が大躍進した。たしかに年金問題は非常に重要な争点の一つだが、選挙戦の争点は年金記録問題に矮小化されてしまって、年金改革の議論がなおざりにされた。

その年金記録問題にしても、与党が公約した調査・統合はいまだ果たしていないのに、白旗を掲げた舛添要一厚生労働大臣がいつのまにか次期首相候補の一人に数えられているのだから、国民を愚弄した話である。

21世紀のボーダレス大競争時代にあって、日本丸がなかなか浮上できないのはなぜか。それは近代以降に築いてきた国家の仕組みが、制度疲労を起こしているからだ。対症療法で船体の穴を塞ぐ今までのやり方はもはや通用しない。すぐまた別の部分が綻んで水が浸入してくる。そろそろ船体を新しくする、つまり国家としてのあり方そのものを新たに選択しなければならない時期にきているのだ。

これからの日本をどんな国にしてゆくのか、国政の場で論じなければならない争点は実にたくさんある。そして国論を二分する問題について、A案を掲げる党とB案を掲げる党が戦うのが本当の国政選挙というものだろう。

私はこの5月、『最強国家日本の設計図』(小学館刊)という本を上梓した。この本の中で、日本の国論を二分する論点を提示し、「AかBか、あなたはどちらなのか?」という問い掛けを読者に行っている。同じことを政治家にも突きつけ、「ブレイン・ジャパン」という頭脳組織を立ち上げて具体化していくことも宣言した。今後、これらの論点については本連載で取り上げていく予定だが、今回はその第1回として、「日本の統治機構」の問題について考えてみたい。

これは今選挙でも大きな争点になるべき課題の一つだと私は思っている。