孫正義の遺伝子を受け継ぐ精鋭部隊は、どんな言葉や態度で相手の信頼を勝ち取るのか。営業先の証言を集めた。

お客を魅了する「未来の見取り図」

巨大なビルが立ち並び再開発が進む東京・中野区のJR中野駅北口。

2013年5月、この場所に本社機能を移したのがキリングループだ。持ち株会社のキリンホールディングスなど15社約2800人が集結した。一大プロジェクトの業務を裏から支えたのが、ソフトバンクのシステムだった。

一連の活動の陣頭指揮を執った井上宏氏(キリンNakano Style推進プロジェクト プロジェクトリーダー)が移転への経緯を説明する。

キリン Nakano Style 推進プロジェクト プロジェクトリーダー 井上 宏氏

「それまでキリングループは中央区新川をはじめ14もの拠点に分かれていました。消費者向けの飲料や食品という視点は同じなのに、連携が取れているとはいいにくかった。そこで『One KIRIN』のキャッチフレーズを掲げ、本社機能を集結させることにしたのです」

従来は事業会社ごとの縦割りの活動で、横軸の視点に欠けていた。キリンホールディングスの三宅占二社長が「内向き上向き箱文化」と指摘した社風を変える決断だった。

移転準備と同時期に、キリンは「グループ調達改革プロジェクト」と呼ぶ、最適な購買をめざす活動をスタートさせた。各拠点がバラバラに行っていた調達を一括化しようというのである。

「2桁の会社と交渉した結果」(井上氏)、新たに選んだ相手がソフトバンクで、09年秋から「パーチェスワン」の導入を始めた。

パーチェスワンとは、ソフトバンクC&S(当時はソフトバンクBB)が08年から提供しているWeb間接材購買システムのこと。「間接材」とは原料のような直接材以外の購買品をいう。たとえば工具、装置、保安資材、部材から、IT機器や文具や机、イスなどの消耗品まで。設備の保守点検などのサービス購入も含まれる。これを一括化できれば大幅な費用削減も夢ではないが、仕入れルートや手法が多岐にわたるため実現が難しく、本格的な事例はほとんどないのが実情だった。