国民皆保険の日本では、職業に応じて誰もがなんらかの健康保険に加入している。
自営業者が加入するのは国民健康保険。会社員や公務員が加入する健康保険を被用者保険といい、中小企業の従業員は協会けんぽ、大企業の従業員は組合管掌健康保険、公務員や教職員は共済組合に加入する。
保障内容も健康保険ごとに異なり、会社員や公務員の被用者保険には傷病手当金や出産手当金など、国民健康保険にはない保障が用意されている。給付額や給付期間は法律で決められているが、大企業などの社員が加入する組合健保には、法定給付に加えて独自の保障を上乗せする「付加給付」を行っているところもある。
たとえば、傷病手当金は病気やケガで仕事を休み、給料がもらえなかったり、減額されたりした場合の保障である。法律で定められた1日あたりの支給額は、標準報酬日額(1カ月の給与を日割り計算したもの)の3分の2相当額。給付期間は最長1年半だ。ところが付加給付のある組合健保には、日給の8割を最長3年給付しているところもあり、法定給付に比べるとかなり手厚い保障となっている。
高額療養費も一般的な所得の場合、通常なら1カ月の支払限度額は【8万100円+(医療費-26万7000円)×1%】だ。しかし、組合健保のなかには、所得にかかわらず、どんなに医療費がかかっても2万円以上は自己負担しなくてよいところもある。2万円なら日々の生活費の中からなんとか捻出できる金額なので、あえて民間の医療保険に加入するまでもない。
また、子どもが生まれた場合の出産育児一時金は、子どもひとりあたり42万円だが、これも組合健保によっては50万円などと給付額を上乗せしているところもある。
こうした手厚い保障があるのに、それを知らずに民間の医療保険に入っているとしたら、それは保険料の無駄遣いというものだ。