「夜の1時間より朝の1時間のほうが、2倍効率がいい」と岡藤社長は試算する。とすると、いつもより2時間早く出社して仕事に集中すると、夜に4時間残業するのと同じ成果が出ることになる。空いた時間で新規事業のアイデアを考えたり、あるいは趣味でリフレッシュしたりすることも可能だ。
ただし、限られた時間で仕事をこなし、最大限の成果を出すためには、それを可能にする技術が必要だ。各分野のプロフェッショナルにテクニックを披露してもらった。
重い仕事を真っ先にやるべき
仕事の山を前に、「やってもやってもなくならない」と嘆いている人も多いだろう。伊藤忠商事の岡藤正広社長は、若いころから「その日の仕事はその日に仕上げて、翌日に持ち越さない」がモットーだ。しかも残業するのは「年に2回の繁忙期に1週間ずつくらい」というほど、毎日、効率的に仕事をこなしてきた。
限られた時間でスピーディに仕事を進めるコツは、全体の仕事を見ながら「重い仕事から着手する」ことだと言う。
「まず、最も重要で時間がかかりそうな仕事から始めます。負荷の低い仕事は、後からでもさっと済ませられるでしょうし、場合によってはやらなくていいかもしれません」
重要で長期戦になりそうな仕事ほど精神的な負担を感じるもの。だから、えてして簡単で早くできそうな仕事から手をつけがちだ。すると、会社でしか仕上げられない重要な仕事のほうが残ってしまう。結局、どんどん先延ばしになる可能性が高まり、気が重くなる。突然の得意先や上司からの依頼への対応も十分にできない。
「学生時代の試験勉強もそうでしょう。要領の悪い人は、問題集を開いたら1ページ目から取りかかる。初めは気力が充実しているけども、その辺りにはやさしい問題しかない。だんだん集中力がなくなり、後半の難しい問題はまったく手つかずになる。本当は自分の弱いところや、重要な問題を初めに抜き出すべきなのに、やらなくてもいい問題ばかり解いているわけです。私自身の反省から話しているわけですけど(笑)」