すべての子どもに「グローバル・マインド」を持たせる

三宅義和・イーオン社長

【三宅】ICTを使いこなせるということは、グローバル人材育成にも通じます。これまでは、企業から必要性が聞かれることが多かったのですけれども、近年は大学や高等学校などの文教分野でも使われることが多くなった気がします。

では、どういった人がグローバル人材なのかというと、その解釈は百花繚乱。英語ができる人=グローバル人材ではないと思うのですが、文科省が掲げる、あるいは向後さんご自身が考えられるグローバル人材というのは、どのような人物像をイメージしていらっしゃるでしょうか。

【向後】日本語の「グローバル人材」という言葉は、なかなか英語になりづらいんです。世界においてはそういう概念はあまりにも当然で、ことさら立ち止まって意識する必要がないところまで来ています。今、世界で活躍している人たちは、自分のことを「グローバル人材」であるとは意識していないかもしれません。そのことはともかく、私としては、どの子どもにも「グローバル・マインド」を持たせることこそ重要だと考えます。そこでまず必要なことは、国内にいようが、海外にいようが、「論理的思考力」を持って相手とコミュニケーションできることです。

次に、「批判的思考力」も不可欠です。日本人の文化的背景が影響しているかもしれませんが、いつでも相手の話を「はい、そうですね」と肯定しがちになります。しかし、そこから一歩先が求められるんです。例えば、相手からさらに情報を引き出すためには質問をしなくてはなりません。どのような質問をすべきか、こういったことが批判的な思考です。

さらに、「課題発見力・解決力」ですね。自分の周りには何も問題がなく、幸せな地域だなと思っていてもかまいませんが、「もしかしたら、ここに課題があって、こうすると、もっと地域社会が良くなるんじゃないか」という発想や行動ができるかどうか。このような能力は、中高生の段階から訓練することが大事で、ここが今後の日本の学校教育には不可欠になると思いますね。

あと1点、日本の子どもたちを見ていて気になるのは、「自己肯定感」の低さです。「いや、僕は社会で役立ちません」とか、「僕はそれほどの人間じゃないんです」と言う。これは謙虚さで処理できる問題ではなく、世界で活躍するには、逆に「僕は社会にとって有用なことができる」、あるいは「人と協力して行動できる」という自信がなければなりません。

【三宅】いや、大変深いお話です。その意味では、子どもたちも世界とどう接するかでは悩んでいるのですよね。

【向後】悩んでいます。だからこそ、教育の役割は重要で、官民一体となった「オール・ジャパン」で取り組むべきテーマです。