学歴は考え方や生き方にインパクトを与えすぎ

磯村さんは東大に入学できる学力はあったが、京大を選んだ。歴史が好きで、京都や奈良に魅力を感じていた。

「当時、マスコミの取材を受けたとき、答えたことですが、京大に入るのは数千人もいますから、特別なことではなく、自慢することでもないと思います。私は、反骨で鼻っぱしらの強い父の影響もあり、威張っている人が嫌い。学歴を誇っている人をみると、気にいらない。素で勝負しろ! と言いたくなります」

入学後、周りの学生と接していて気がつくことがあった。

「受験で求められる以上のことをあまり知らないように感じたのです。たとえば、古典。私は大学受験の前、独学で勉強をしていたとき、父の勧めもあり、古典などをずいぶんと読みました。

結局、“頭のよさ”の種類が違うのでしょうね。難易度の高い学校に入るのを“頭がいい”というならば、たとえば、引っ越しをする運送会社の方も“頭がいいな”と私は思うのです。短時間で、多くの物を次々と運びますね。あれは、すごい! と感心します。ビジネスのネタを見つけ出し、会社を創業する人も、本当に頭がいいと思います」

1987年に卒業すると、京都大学大学院経済学研究科(現代経済学専攻)に進んだ。経済学部は1学年200人ほどいて、京大の大学院に進学したのは5~10人という。

「性格なども研究者向きだと思いますから、院に進んだのです。自分の能力を生かすことができないフィールドに進むのは、残酷なことです」

磯村さんは、日本の社会では、学歴がその人の考え方や生き方にインパクトを与えすぎている、と考えている。

「大学受験の結果で、自分の心の中で、ピークをつくってしまいがちです。“自分は東大卒だから、こうなるだろう”“東大に入れなかったから、こんな生き方しかできない“というように。私は高校に行っていないから、偏差値ランキングなどを意識したことがありません。大学受験の結果で、自分の人生を決めるという考えはなかったのです。学歴や偏差値に影響を受けていないから、学歴で威張る人をみると、“だから何?”という思いが湧いてきます」