「ちょっとは通用したかな」

大野は、フィジカルが強いラインオンズのフォワードに真っ向勝負を挑んだ。ボールを持てば、低い姿勢で一歩でも前に出ようとした。タックルでは、頭から相手の下半身に突っ込んでいった。阿修羅のごとく。

前半、目の上を切り、いったんピッチを離れて治療した。でも、頭にぐるぐるテープを巻くと、また相手にぶつかっていった。後半の中盤。キックオフで相手にタックルにいって、はじき飛ばされた。仰向けになったけれど、すぐに立ちあがって、ふらふらになりながらディフェンスに走った。

試合後聞けば、この時、軽い脳しんとうを起こしていたらしい。でも、本能だったのだろう。ライン際を走る相手にタックルにいこうとし、勢い余って、そのままスタンドのコンクリート壁あたりまで飛んでいった。転倒。見ていて、もう胸が揺さぶられた。

「灰になっても、まだ走る」が、大野のモットーである。敗戦は悔しい。でも、「(相手は)想定内の強さでした。ちょっとは通用したかな」と言うのである。

「年齢関係なく、サンウルブズの一員として、まずジャージを着ることにこだわりたい。その上で自分の役割をまっとうできればいいなと思うんです。そこだけは、しっかり自信を持ってやっていきたいですね」

日本ラグビーをけん引する使命感がボロボロのからだを後押しする。スーパーラグビー参入の意義を聞けば、「ジャパン強化のためになることです」と言い切った。

「プレーの質もそうですし、移動も環境も、タフなシリーズになります。これを若い選手に経験してほしい。このレベルの試合を経験できることは大きいんです」