【田原】どれくらい緩まないのですか。
【道脇】アメリカの航空宇宙関連で使われる耐久試験で実証済みです。試験装置を動かし続けたら、装置のほうが壊れてしまいました。
【田原】それはすごい。このネジはどういうものに使われるのですか。
【道脇】将来的にはすべてのネジをL/Rネジに変えたいですが、いまもっとも期待しているのは、溶接の代替です。橋梁など社会インフラに対するメンテナンスの需要は年々高まっています。一方、溶接は国家資格ですが、更新が難しいこともあって今後は有資格者が減っていきます。難しい技能が要らず、誰でも簡単にものを接合する方法が必要になる。L/Rネジは、その役割を担えるはずです。
【田原】コストはどうですか。
【道脇】工場の中でやる大量生産ラインのロボット溶接はコストが安いので、ネジが代替するのは難しいと思います。ただ、現場溶接はコストが高い。技術者の人件費はもちろん、仮設の足場のレンタル費用も馬鹿になりません。ネジも足場は必要ですが、短時間で施工できるのでコストはかなり抑えられるでしょう。
【田原】緩まず、かつ安いわけだ。
【道脇】コスト以外にもメリットはあります。いま開発中なのですが、ネジにセンサーの機能をつけてデータを収集するのです。いわゆるIoTですね。たとえば建物の構造部材の締結にセンサー付きのネジを使うと、その建物の状態を遠隔で把握できるようになる。効率的なメンテナンスが可能になります。
【田原】データ収集は従来のネジでできないのですか。
【道脇】緩むネジだと、異常値が計測されたとき、地震で建物が変形したからなのか、それともネジが緩んだ結果なのか、見分けがつきません。緩まないネジだからこそ、精度の高いデータが取れるのです。