無理な手術か、手術方法が間違っている
ただ、医療事故ではないかと思われるような死亡例を立て続けに出すような医師は許されるべきではありません。この新制度とは無関係ですが、一定の期間内に同じ手術によって4例以上、複数の患者さんを死亡させた場合には、執刀医である外科医が刑事告訴されても仕方がありません。裁判で量刑を決める際に、殺害被害者の人数、犯罪の性質、動機や計画性など、死刑にすべきかどうかを判断する「永山基準」がありますが、それと同じように、本人に故意がなかったとしても、医師が業務上過失致死で刑事罰を科される基準を作る必要があると思いますし、そのように自ら医療安全上の負荷をかけることによって、評価に値する職業集団となることでしょう。
今年の夏、神戸市の民間病院「神戸国際フロンティアメディカルセンター(KIFMEC)で、2014年11月から15年6月までに生体肝移植を受けた患者9人のうち5人が術後1カ月以内に死亡したことが発覚しました。短期間に8人中4人の死亡例が出た時点で、日本肝移植研究会が調査を行い、「手術前の計画や術後の管理に問題がなければ、4人中3人は救命できた可能性が高い」との報告書を出しています。しかし、KIFMECは、一時的に休止していた生体肝移植を再開して9人目の患者を執刀し、5人目の死亡例を出す結果となりました。
生体肝移植は、確かに、患者の側にも肝臓の一部を提供する家族の側にもリスクの大きい医療です。ただし、いくら生体肝移植の権威でも、立て続けに死亡例が出るという事態は異常であり、重く受け止めなければなりません。生体肝移植は、死亡してもいいからイチかバチかで行う手術ではないはずです。
同じ外科医として結果を見る限り、外科手術で死亡例が立て続けに起こる理由は、手術の対象にならないくらい患者さんの状態が悪いのに無理に手術をしてしまっているか、手術の方法が間違っているかのどちらかであることが多いのです。いくら患者や家族に懇願されても、勝算もないのに手術をしているとすれば、反社会的行為といわれても仕方がないのではないでしょうか。