――悪人ではないし、仕事の能力も高いんですが、部下がかなり変人なんです。

僕は、世の中の人はほとんどみんな変な人だと思っています。その意味は、「価値観が違う人」ということです。人間はみんな顔が違うし、能力も異なるので、みんな異能人であり変人なのです。まずそう考えるべきです。

そのうえで、仕事にはそれぞれ明確な目的があるのですから、その目的に照らし合わせて「数字・ファクト・ロジック」で、なるべく感情を交えずに仕事をする。そうすればお互いにやりやすいし、不満もなくなり、その人の能力も発揮できます。

――ドライですね。「感情を交えずに仕事をする」なんて、できるかな。

慣れたらそのほうが楽ですよ。むしろ感情を交えてしまうと、何でもはっきり説明しなくなる。お互いわかってくれると思っているからトラブルになるのです。

たとえばある社長が秘書に、「今度、大事な取材があるから、ちゃんと準備しておいて」と指示する。社長の頭の中には「ちゃんと」に一定の基準があって、それは当然、秘書もわかっているだろうと思っている。だから、仕事の結果が期待以下だったら、社長は腹を立てます。

そうならないためには「今度取材があるから、このデータを用意して1日前に渡して」と具体的に言うほうが互いのためにいいのです。うまく仕事ができない人は、たいてい「詰め」が足りない。特に外国人と仕事するときには、詰めが甘いと通用しません。

――出口さんは海外現地法人社長のご経験がおありですよね。

ロンドンにいたとき、5時に会社が終わるのですが、5時10分に階下の部署に行ったら誰もいない。翌日、責任者に「昨日、君に話が聞きたかったのだが」と言ったら、「なぜ事前に残れと指示をしてくれなかったのですか。ボスが残れと言わなかったら、僕は5時にはデートに出かけますよ」と。言われてみれば当然ですね。

だからあなたはラッキーです。これからグローバル化が進んで、外国人と仕事をする機会があるかもしれないので、いい練習になりますよ。

――出口さんはどんな「変人」と仕事をしたことがありますか?

僕が若い頃のある上司は毎晩、お酒を飲んで麻雀をしていたので、1日中、会社で居眠りをしていました。打ち合わせでも僕が説明しているのに、こっくりこっくりしているから説明をやめると、「何でやめるんだ。続けろ!」と。

――寝ていても、仕事ができるんですね。

腹が太い上司で、何でも任せてくれていたし、ビシッと指導もしてくれた。変人だろうが、1日中寝ていようが、仕事ができればOK。原則はとてもシンプルです。

Answer:あなた自身も含め、人はみんな「変人」だと考えましょう

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長兼CEO

1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。
(構成=八村晃代 撮影=市来朋久)
【関連記事】
創造力ある変人社員を120%生かすには
「人間同士、説明すればわかってもらえる」はウソである
変人が認められる瞬間
部下を平等に扱うのは時間のムダ
究極のマネジャーは「合唱指揮者」である