さらなる高みへ求められるディシプリン

評価したいのは、この引き分けに、選手たちが満足していない点である。パナソニックの堀江主将は課題を口にした。

「最後の最後までどちらに転ぶかわからないゲームだった。ここからは、個人がどれだけうまくなれるか、も大事になる。個人の強さが大切になってくる。もっと、チームの強みを出せるよう、意識して練習していきたいと思います」

ラグビー人気の凋落を経験しているからだろう、スタッフも選手も人気拡大に必死なのである。ただ、好事魔多し、という言葉もある。こういうときはグラウンド外のディシプリン(規律)も重要となろう。

老婆心ながら、人気に決して浮かれてはならない。注目されている今こそ、言動には気を付けよう。よからぬ事を起こさないためには、何よりトップリーガーひとり一人が自覚と誇りを持って、社会的規範を遵守することである。

つまるところ、ラグビーをラブする者たちにとって大事なことは、ピッチ内外のディシプリン、これである。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)、『新・スクラム』(東邦出版)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。
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