30代で、当時の社長、五島昇の秘書を務めました。秘書といっても使い走りに近く、五島が自宅を出てから帰宅するまで傍らに張りついて、タイムキーパーの役回りもしていました。

一度だけ、五島主催の宴席に、五島を遅刻させてしまったことがあります。10分ほどの遅刻でしたが、五島は列席者に遅刻のお詫びを言うと、外で待つ私に知らせることもなく早々に退席してしまいました。恐らく自分が礼儀を欠く行為をしてしまったことにいたたまれなかったのでしょう。お招きするお客様に対する礼節と、タイムマネジメントの大切さについて、五島に叱責された失敗談ですが、五島の誠実さを実感した出来事でもありました。眼光の鋭さに潜む厳しさと、慈愛に満ちた優しい眼差しを併せ持った、スケールの大きな方だったと思います。

東急ホテルズ社長 高橋 遠氏

当時の私はまだ若く、五島から経営者としてなにかを学び取る段階ではありませんでしたが、この一件はいまも忘れられず、心に残っています。