ケアする人をケアしなければ総倒れ
ただ、介護の悩みは身内の恥をさらすような部分があることも事実。「そんな話をしに行って、お役所的な対応をされたら嫌だな」という意識も働きます。実際、私も介護をしていた時、社協に相談に行こうと頭に浮かぶこともありませんでした(いいケアマネージャーに恵まれたこともありますが)。
「もっと気軽に相談できるところがあったらいいのに」
ずっとそう思っていたところ、親しくなったケアマネから「日本ケアラー連盟」という組織があると聞きました。「ケアラー」とはケアする人のことで、「家族などの無償の介護者」のこと。ケアラーを支援する組織として2010年に設立されたのが「日本ケアラー連盟」だそうです。連絡を取ると、代表理事の牧野史子さんが取材に応じてくれました。
1995年、西宮市に住んでいた牧野さんは阪神淡路大震災に遭遇。被災者支援のボランティア活動を行いました。その被災者のなかに介護で孤立した親子に会ったことがきっかけで介護者支援の活動を始めることになったそうです。
2001年に出身地の東京に戻ってからも活動は継続。介護者支援を目的とするNPO法人「アラジン」を立ち上げます。そこで創設したのが「ケアラーズカフェ」でした。
「ケアラーは日々の介護で肉体的にも精神的にも疲弊しています。しかも、そのつらさを誰に訴えることもできず、ひとりで抱え込んでいるんですね。そうして孤立し追い詰められ、ケアラーの方が体を壊したりウツになったりして共倒れになることもある。虐待といった悲劇が起こることもあります。でも、そうした悩みを誰かに聞いてもらうだけでも少しは気が晴れるじゃないですか。ならば、同じ悩みを持つケアラー同士が集える場ができないか。それもオープンなカフェという形態で。そう考えてつくったのが、ケアラーズカフェです」
話をしただけで介護状況から解放されるわけではありません。しかし、共通の悩みを吐露できる場があるというだけで、どれだけ救いになり、心強く思えることか。
相手の話を聞くことで、自分が深刻に受け止めていることも実は大したことではないと思えることもある。介護に関する情報交換もできるし、つらいのは自分だけではないと思える効果もあります。
近所に介護体験のある人がいると助けになると前述しましたが、そうした存在がいない場合も、ケアラーズカフェという場が人とのつながりを生むというわけです。