W杯で何を学んでくるか

筆者も1982年2月の全早大・英仏遠征のメンバーとして、オックスフォード大と対戦し、クラブハウスに招かれたことがある。歴史を感じさせる建物で、たしか荘厳な雰囲気と若者特有の向上心に満ちあふれていた。

奥克彦さんは早大ラグビー部の誇りである。知力、体力、胆力、すべてにずば抜けていた。イギリスには「ノーブレス・オブリージュ」という伝統がある。恵まれた才能と環境に生まれた真のエリートは率先して社会への責任を果たす義務が有るといわれている。奥克彦さんはまさにその実践者だった。

きっと早大ラグビー部の学生たちには貴重な体験となったはずである。オックスフォード大の重厚な歴史に触れ、奥克彦さんという偉大な先輩の存在を改めて知る。ラグビーを通じて何を学ぶのか。

奥克彦さんはラグビーのワールドカップ(W杯)の日本開催を夢見ていた。その夢は、2019年に実現する。その前回大会となるW杯イングランド大会が18日、開幕。

もちろん日本代表には頑張ってもらいたい。だが試合だけでなく、僕らはW杯を機会にラグビーの歴史も学ぶ。スポーツの歴史を学ぶ。人間を学ぶのである。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。
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