TOEICは英語力を測る道具でしかない
【三宅】英語のコミュニケーション能力を測るテストとして、TOEICは本当によくできているテストだと思います。ところで、TOEICがここまで日本に受け入れられ、支持されたというのは、なぜだと思われますか。
【千田】やっぱり、本当の英語力を測るということに日本人自身が飢えていたからだと思います。時代もそうだった。とりわけ、企業は切実でした。70年代も終わる頃、まさに日本が国際化していく頃で、79年あたりには日米貿易摩擦も取りざたされていました。当時、日本は外に出て行って外貨を稼いでくるけれども「日本人ビジネスマンの顔が見えない」、あるいは「日本人は、顔は見えても何を考えているかわからない」とも言われていました。
当時、“Japan as a closed book”という表現がありました。日本という国は、表紙が閉じて中身が見えない本。そう言われた時代でした。そんなときに国際的なコミュニケーション能力をつけるっていうのは、喫緊の時代的要請だったというのが僕の認識ですね。
“グローバル化”という言葉が初めて日本経済新聞に出たのは83年です。そして、85年に「プラザ合意」がありました。以降、円高が急速に進み、円の動きも日本人の動きも地球規模になってきたんですね。さらに「Windows95」が発売になって、インターネットが普及し、誰もがEメールを使い出しました。
こうしてエコノミーとコミュニケーションのグローバル化が進んだ結果、英語は世界共通語としてますます重要になってきました。そこで問われて来たのが、英語によるコミュニケーション能力の測定。現在のレベルが客観的にわかり、明確な目標設定ができ、一生懸命やった人がどのぐらい伸びているかがひと目でわかる。そんな客観的な評価基準の必要性が、教育界にもビジネスの世界にも潜在的に膨らんでいたのだと思います。
それが国際化・グローバル化の進展により一気に顕在化した、と僕は解釈しています。