スタッフには30分とは言わないが、企画やラフ作成に90分のリミットを設けている。

「たとえば、企画を決めるなら90分で50の案を出す。3人で考えれば150案が出ますね。それを会議室の壁一面に貼って、これとこれを掛けたら面白そうだと考えていく、1人で悩むよりも早く企画が固まるんです」

この掛け合わせに欠かせないのは想像力だ。A案とB案を一緒にしたらどうなるか。想像する力を養うのが、水野さんにとっては午前中の情報収集タイムだ。自宅でテレビやウェブをチェックしたり、雑誌に目を通しながら、事象の裏側に頭を巡らせる。その習慣が仕事で役立つことは多いのである。

ただし、企画やラフはプロジェクトの中では前段階。本分は最後の“詰め”にあるという。

「企画やラフと異なり、詰めにはかけられるだけの時間をたっぷりかけたい。そうすれば、精度を高めることができます。くまモンの場合、詰めの段階で表情が微妙に異なる3000体をつくり、1つ選びました」

くまモンの目や口の位置が1ミリ違ったら、これほど人気が出なかったかもしれない。必要に応じた時間の配分こそ、水野さんの成功哲学だ。

【QUESTION】忙しい中で、クリエーティブなアイデアを生み出すには?
斬新なアウトプットをするには、誰も考えなかったとんでもないことを閃めかなければならない、と思っている人が多いのですが、祈祷師のように素晴らしいアイデアが降りるのを待つのは時間の無駄です。考える前に、閃きをすべて書き出してみること。アイデアを持ち寄ってそれらを掛け合わせたほうが、優れたものができあがる
good design company代表取締役・慶應義塾大学特別招聘准教授 水野 学
1972年、東京生まれ。96年多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業、98年にgood designcompany設立。ブランドづくりの根本からロゴ、商品企画、パッケージ、インテリアデザイン、コンサルティングまで、トータルにディレクションする。
(本野克佳=撮影)
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