ボクシングの世界ヘビー級チャンピオンだったムハマド・アリ、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などに主演した俳優のマイケル・J・フォックスなどが患っている病気として、広く一般に知られるようになったのが「パーキンソン病」である。

初期症状は、約50%の人はどちらか一方の手や足が震えることで始まる。約30%の人は歩き出すときに足が出にくくなり、残り約20%の人は左右どちらかの手の動きがぎこちなくなり、細かい動作ができなくなるという症状で始まる。

時間とともにパーキンソン病の四大症状といわれる「片側の安静時振戦(しんせん)」「動作緩慢」「固縮(こしゅく)」「姿勢保持障害」が揃ってくる。

◎片側の安静時振戦…ジッとしているときにどちらかの手や足が比較的ゆっくりと震え、何かしようとすると震えが消える。数年たつと反対側の手にも震えが表れたり、足に表れたりする。
 ◎動作緩慢…すぐに動き出せず、動き出しても動作はゆっくりになってしまう。
 ◎固縮…筋肉の緊張が高まる。医師が患者の手を動かそうとすると、カクッカクッと断続的な動きになる。
 ◎姿勢保持障害…ころびやすいなど、姿勢を保つのが難しい状態。

そして、進行すると歩行障害が出てくる。“すくみ足”といって、歩き出す第一歩が出づらくなり、歩き始めても“すり足歩き”になる。つまり、つま先から床について小刻みに歩くのである。これがパーキンソン病の完成した症状といわれている。

現在、日本のパーキンソン病患者は約15万人で、発症年齢は55~70歳といわれ、発症のピークは60代である。

パーキンソン病は、脳内の脳幹にある「黒質」の神経細胞が減少することによって起こる。神経細胞が減少すると神経伝達物質のドパミンも減少。運動機能を司る「線条体」にもドパミンの不足が起きるので、前述した特徴的症状が表れる。

ただ、今日ではパーキンソン病が直接生命に関わることはなくなってきた。寝たきりになる人も、骨折、重症の肺炎といったアクシデントがない限り、あまりいないのが現状。これは、パーキンソン病の治療が進歩したからである。

治療には「薬物療法」と「手術療法」があるが、中心となっているのは進歩した薬物療法で、より症状をコントロールできるようになってきた。

最初に使われるのは「ドパミンアゴニスト(ドパミン受容体刺激薬)」。ドパミンの代わりをする薬である。1、2年使用しても十分に症状がなくならない、もしくは副作用の「吐き気」や「便秘」「幻覚」等で薬が服用できないときには「L-DOPA(ドパミン補充薬)」を使う。

このL-DOPAが薬物療法の中心薬だが、4、5年服用すると患者自身の意思とは無関係に手足が動く不随意運動が40~50%の人に出てくる。それを先のばしにするため、ドパミンアゴニストを先に使うのである。

ドパミンアゴニストにL-DOPAを上乗せするのが標準治療。それで症状が十分になくならないときは「抗コリン薬」「塩酸アマンタジン」「MAO-B阻害薬」「COMT阻害薬」などが補助的に使われる。

手術療法は、薬でコントロールが難しい場合や、不随意運動が出て辛いという患者に行われる。最近は「脳深部刺激療法」が注目されている。これは、脳の深いところにある視床下部に電極を埋め込み、皮下に配線させて胸部皮下に発信器を埋め込むもの。発信器から電気信号が送られ、刺激し続けると、不随意運動などがほとんど表れなくなることもある。

【生活習慣のワンポイント】

パーキンソン病の原因はまだはっきりわかっていないので、生活習慣で注意すべきこともはっきりしない。ただ、加齢が関係しているので、アンチエイジングを心がけることは、多少の予防策になるのかもしれない。