球界のご意見番として知られ、歯に衣着せぬ言動で球界に「喝!」を入れ、野球ファンや球界関係者から愛された“大沢親分”こと元日本ハム監督の大沢啓二氏が、10月7日、胆のうがんのため亡くなった。78歳だった。
大沢親分の命を奪った胆のうがんは、胆管がんと合わせて胆道がんと呼ばれ、がんの年間死亡者数では第6番目で、2008年の数字で1万7311人。胆のうがんだけでは約6000人くらいと推測されている。
胆のうがんは、その名称通り「胆のう」にできる「がん」である。
胆のうのある場所を知るには、まず肝臓に注目。肝臓は生命の維持に不可欠な化学工場で右上腹部のほとんどを占めている。胆のうは肝臓の下にあり、長さ6~8センチ程度のナスのような形で、肝臓で作られた消化液の胆汁を溜めておくところである。食事をすると胆のうが収縮して胆汁が絞り出され、消化を助ける。
その胆のうにできる胆のうがん、早期には自覚症状がほとんどなく、右腹部や背中の痛み、黄疸などの症状がでてきたときは、かなり進行した段階である。
早期発見は人間ドックなどでの偶然によることが多く、なかには胆石を持っていた人が、検査でたまたま胆のうがんが発見されたというケースもある。
胆石→検査→胆のうがん発見。この一連の流れから、胆のうがんの原因として胆石があげられている。事実、胆のうがん患者の胆石併存頻度は約60~70%と高い。そして、胆石が女性に多いように、胆のうがんの男女比も1対1.5で女性に多い。ただ、胆石と胆のうがんの関係はまだわかってはいない。
胆のうがんが疑われると、問診から始まり、基本検査の「腹部超音波(エコー)検査」と「CT(コンピュータ断層撮影)検査」が行われる。異常の有無がわかるのみならず、手術が可能か否かの判断もできる。さらに、胆管、膵管の状態を知るために「MRCP(磁気共鳴胆管膵管撮影)検査」などが行われ、がんの広がりも診断できる。
そして、胆のうがんと診断されると、基本はがんを取り除く手術。がんが胆のうの中にとどまっている進行度「I期」の状態であれば、胆のうのみを摘出する「胆のう摘出術」が行われ、手術は終了する。5年生存率は90%を超える。
ところが、がんが胆のうの壁を破って増殖していると、その広がり度合いによって対応は異なる。がんが周囲臓器の肝臓に達していると、胆のう以外に肝臓の一部とリンパ節を切除する。膵臓にも達していると、胆のう以外に肝臓、膵臓の一部やリンパ節を切除する。が、ここまで広く切除する手術の成績は、治癒切除ができたとしても5年生存率は50~60%。再発したり、がんが取り切れなかった場合は化学療法(抗がん剤)が行われる。もちろん、再発予防のためにも行われている。
胆のうがんは診断・治療の難しいがんのひとつなので、セカンドオピニオン(主治医以外の専門医の意見)をとり、がんの状況、そして治療方針に十分納得したうえで治療を受けるべきである。
【生活習慣のワンポイント】
胆のうがんは、胆石が大きなリスク要因かはまだわかっていないが、その指摘もあるので、以下の5点を実行するのは悪いことではない。これは生活習慣病全般の予防にも結びつくのだから……。
(1)和食中心の食生活に! コレステロールを減らすようにする。日本食の良さは欧米諸国が注目している。日本人がその良さから目をそらしてはいけない。
(2)三食規則正しく食べる! 胆のうは胆汁を溜めるのみならず、濃縮するので、1日3回規則正しく消化液を絞り出すのがいい。
(3)野菜を十分に摂取しよう!
(4)喫煙はやめる! お酒は日本酒に換算して1日1合程度にする!
(5)20分のウオーキングを1日に3回は行う!