日本企業で欠かせないビジネス慣習のひとつが朝礼だ。昭和の昔、サラリーマンの仕事は朝礼、ラジオ体操、上司の精神訓話から始まった。月日が流れ、体操と精神訓話は姿を消しつつあるが、朝礼には時代を超える効用があるのだろう。いまもビジネスマンたちは朝から元気に声を出している。

社名のユーグレナとはミドリムシのこと。藻の一種で生物学上、動物と植物の両方に位置する。ユーグレナという名前を付けたのはオランダの生物学者アントニ・ファン・レーウェンフック。画家フェルメールの遺産管財人である。

同社は世界で唯一、ユーグレナの屋外大量培養に成功したベンチャー企業である。現在は機能性食品「緑汁」やサプリメントを販売しつつ、ユーグレナ由来のバイオ燃料開発を進めている。

毎週火曜日、同社の飯田橋オフィスでは朝礼を行っている。もっとも、本店と研究所は東京大学構内にあり、石垣島に生産技術研究所がある。東大と石垣島に属する社員はモニターを通じての出席だ。

・各部責任者による業務報告
・バースデイ・サークル

その月に誕生日の人がスピーチをする。誕生日の人がいない場合は「グッド・アンド・ニュー」と題して、何人かがスピーチ。取材当日は女性社員が指名された。

「重大なニュースがあります。このたび結婚することになりました」

オフィスだけでなく、モニターを通じて東大、石垣島の社員からも「ええーっ」という声が。ざわめきが終わると出雲充社長の話。

・社長訓示

「結婚発表を聞いて、ちょっと衝撃を受けています……」


(右上)創業者の出雲社長。(左上)この日はスカイプで東大、石垣島、バングラデシュに出張中の社員、飯田橋オフィスが繋がっていた。(下)当日、指名された女性社員。慣れた様子で話し始めたが、結婚のくだりでは、はにかんだ顔。

そんなあいさつから始まった。社員の過半数は東大卒で研究職も多い。冷めた会社かと思っていたら、同僚の婚約発表で大いに盛り上がる家庭的雰囲気の企業だった。

朝礼について、出雲社長は語る。

「人数が増えオフィスが分散してから、顔を見合わせて話をする重要性に気づきました。元気かどうかを確認する機会と思っています」

同社では朝礼の前、7時30分から常務会も行っている。

「前職はメガバンクでした。社員寮は船橋で、配属先は神保町支店。電車で座るには、西船橋6時45分の始発に乗らなくてはならない。新入社員は能力にそれほど差はありませんから、前夜遅くまで仕事しても必ずその電車に乗ることを自分に義務づけたんです。自分で決めたことを守る人は、何事においても最後まで頑張れるんじゃないかと思っています」(出雲)

あくびしながら朝礼に出る人もいる一方で、出雲のように自分自身を甘やかさないために朝の時間を使う人もいる。長い人生で見ればこれは大きな差となって跳ね返ってくる。

(文中敬称略)

(尾関裕士=撮影)
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