新PBの成功要因は、これまでの百貨店にはなかった新しい枠組みにある。価格を抑えるためには素材の調達や縫製の段階でコストを圧縮しなければならない。そごう・西武は、量販店やショッピングセンター向けの商品を得意とするアパレルのクロスプラスに白羽の矢を立てた。
かつて百貨店マンは「我こそは流通業の雄」と豪語し、量販店アパレルと百貨店アパレルとを線引きしていたものだ。百貨店が量販店アパレルと手を組む時代がくるとは隔世の感がある。そごう・西武は百貨店マンのプライドを棄てたのか。そうではない。客が百貨店に望む商品を適正な価格で提供することこそがプライドだと気づいたのではないか。
同じセブン&アイグループのイトーヨーカ堂と共同で素材を調達し商品化する試みも始まった。カシミアのセーターも、両社がまとめて素材を仕入れればコストが下がる。同じ素材をそごう・西武は細かく紡ぎ、付加価値をつけて上代9800円で売り、イトーヨーカ堂は6000円台で売る。グループのネットワークと機動力が生きている。
滑り出し好調なリミテッドエディションの売り上げは50億円。PB全体でも200億円。そごう・西武の売上高のわずか2.4%だが、この微々たる数字が将来を左右する学習効果を放っている。
「PBをやると、お客様から直接反応がかえってくるので勉強になる。考えるようになる。やっぱりお客様はいまの百貨店にはかなり不満があるぞということがわかってきました。それをいろいろな売り場に生かしてきたんですが、化粧品売り場もその一つ。アンケートを取ると、いまの化粧品をずっと使いたいと回答した人は5%。もっといいものがあれば変えたいと考えている95%に向けて導入したのが、無料でお客様の肌診断を行ったうえで適切なブランドを紹介し、2週間分のサンプルを購入できるようにしたサービスです」(松本氏)
受付カウンターは、各ブランドのショップからは目が届かない位置にある。これは重要なポイントだ。新しいブランドを試したい、浮気してみたいと考えても、ふだん利用し世話になっている美容部員には知られたくない。だが、離れた位置にあれば気軽に利用できる。