後見人として期待される司法書士
法律系の資格で弁護士に次いで難しいのが司法書士だ。司法書士は土地や建物など不動産分野や株式会社の設立など商業分野で登記業務を行うプロだ。これまでこの関連の仕事が9割を占めていたが、00年に施行された「成年後見制度」によって業務の幅は広がった。この制度は認知症や障害などで判断力が不十分な人の財産・生活を守るために、後見人が本人の代わりに権利や財産を守ることができる。六本木司法書士合同事務所の横原温幸氏が将来性について話す。
「専門知識を持つ司法書士は後見人として期待される存在です。高齢化社会の影響で、今後一層拡大していくと考えられますが、遺言や相続についての相談業務も司法書士の大事な仕事のひとつです」
また、資格取得後、法務大臣の認定を受けることで、訴訟額140万円以下の簡易裁判であれば、司法書士が法廷での弁論など弁護活動ができるようにもなった。
年々業務範囲が広がりつつあるのが行政書士だ。建設業の許可や自動車登録や車庫証明など官公署提出書類の提出手続きの代理や、契約書などの書類を代理作成するのが主な仕事だ。扱える書類は数千種類以上あり、幅広く活躍でき、消費者相談の増加で、「身近な街の法律家」として活躍の場がさらに広がる可能性もある。が、仕事の減った弁護士など他の士業との縄張り争いが加速する可能性が高いことも確か。
「弁護士は法律の解釈で正しいかどうかを判断します。その結果を法の運用面で、依頼者の人生のどのような幸福に結びつけられるかを考えて行政と折衝するのが行政書士です。私の場合は弁護士と合同して仕事をすることが多いですね」と話すのは行政書士の渡辺政子氏。政府は震災の復興需要や20年の東京五輪の建設需要による人手不足解消に外国人労働者の受け入れ拡大を検討しており、行政書士が得意とする建設業の許可の申請、外国人の在留許可申請などの仕事は確実に増える。
超難関資格では弁護士と双璧をなす公認会計士の仕事は、企業の経営状況を報告する「財務書類」が公正なものか判断する監査だ。対象は資本金5億円以上の企業などと決まっており、監査法人が監査を行う。このため、会計士は大手の監査法人に所属するサラリーマン会計士がほとんど。ところが試験合格者が増えたために監査法人へ就職できずに、資格取得のめどが立たない待機組が多数出る事態になった。資格登録のためには2年間の実務経験が必要だからだ。後は一般企業へ就職するしかないが、認定してもらえる部署に配属されない限り、会計士にはなれずじまいだ。ただ、合格者数は右肩下がり。求人と求職のミスマッチが解消され、景気の回復次第で、人員を減らした監査法人の採用人数も増える。また、開業している公認会計士は、税務業務を中心に仕事をする道もある。