一方の選定療養は、快適な環境を得るためのアメニティ的要素があるもの。たとえば差額ベッド代や、時間外診療、紹介状がない病院での診療、180日を超える入院、予約診療、制限回数を超える医療行為、歯科の金合金等、金属床総義歯などが挙げられる。
保険外併用療法の実施にあたり、「保険内医療でも十分治療は行えるのに、医療費の高い保険外療法を医師が行う、あるいは勧めるようになるのではないか」と危惧する声もある。「ベッドが空いていないので個室に移ってくれ」と病院から言われ応じたのに、差額ベッド代をとられた、という実例もある。
自分や家族が重大な病気になったときは冷静な判断ができにくい。そもそも医師に対して意見、異論を述べることなど考えられないという人もいるだろう。しかし、大切にすべきは自分や家族の命である。よって患者自身で医療行為の安全性や有効性に関する情報を得て、適切な医療サービスを選択する必要がある。とりわけ、がんのような命にかかわる病気の場合は、最初に診察してくれた医師に勧められるまま素直に治療法を決めるのではなく、別の医師からセカンドオピニオンを聞いたうえで判断を行うことが望ましい。
医療は日々進歩しており、健康保険の範囲外で病気に効く先進薬が今後出てくる可能性はきわめて高い。その一方、がん治療においては保険外併用療法を利用できるかどうかで生死を分かつ場合もある。「保険がきかない」ときの備えのためにも、医療・介護費は蓄えておくべきだ。近年は先進医療特約などの保険も増えてきている。内容を吟味したうえで、必要に応じて利用するのも一案だろう。
※すべて雑誌掲載当時
(構成=野崎稚恵)