懸念される「円安倒産」食料品や資材に影響大

再構築の必要性を感じる企業が増えているのは、景気の足取りがしっかりしているとは言えないからです。東京商工リサーチは、民間信用調査機関として日本で初めて「倒産」という言葉を定義づけました。その経験から言えば、「景気の転換期には倒産が増える」というのが定説です。

ところが、14年の倒産件数は9731社と、24年ぶりに1万件を下回りました。上場企業の倒産もゼロで、倒産は減少傾向にあります。さらに、景気回復期に顕著に表れる「放漫経営」を原因とする倒産や、再建型の倒産を選択する経営者の増加もみられません。

それではなぜ倒産は減っているのか。その要因としては、中小企業金融円滑化法の影響が挙げられます。同法は、金融機関が借り手である中小企業からの申し出により貸付条件の変更等や円滑な資金供給に努めるという、約2年間の時限立法でした。09年12月に施行されて期限を迎えましたが、当時の中小企業の資金繰りが引き続き厳しい状態であったため、2度にわたって延長され、13年3月に終了しています。

しかし、政府は期限到来後も法律制定時と同じように、金融機関に中小企業への円滑な資金提供を求めました。その結果、金融機関が中小企業のリスケ要請に応じたため、倒産が抑制されたのです。

また、大々的に行われた公共事業の前倒し発注も、倒産の減少要因です。政府は昨年、14年度予算で公共事業の9.2兆円分などを対象に、予算の執行を4~9月に集中させました。目的は消費税増税後の景気の下支えです。大規模な公共事業が前倒しされたことで、実際に建設業は過去と比較して昨年倒産の減少が目立った業種の一つとなっています。

つまり倒産は減少しているというよりも、先送りされているのです。これから企業の新陳代謝が進まなければ、本当の意味での景気の回復は覚束ないでしょう。

この先、懸念されるのは「円安倒産」です。昨年12月5日の外国為替市場は一時、1ドル=121円台まで円安が進み、07年7月以来の円安水準になりました。輸入関連業種を中心に、円安倒産が増加基調にあります。実際に14年の円安関連倒産は282件で、前年の2倍増。急速な為替変動が中小企業の経営を直撃しました。特に食料品や金属製品、卸売り小売業、サービス業などは円安デメリットを受けやすいため、今後も注意が必要です。