税制改正がビジネスチャンスを拡大か
民間大手がここにきて空き家ビジネスに注目し出した背景は、単に空き家のストック規模の大きさばかりでない。国や自治体が空き家対策に本腰を入れ始めたのに加え、税制改正が空き家ビジネスを後押しするとの判断があるからだ。実際、今年1月に実施された相続税の非課税枠の大幅引き下げにより、課税対象が拡大する大都市部を中心に相続税対策として今後、所有者が空き家の有効活用に乗り出すことが十分考えられ、ビジネスチャンスの拡大が予想される。
一方、昨年11月の臨時国会で、議員立法で提出された空き家の所有者に対する自治体の権限を強化した「空き家対策推進特別措置法」が成立したことも大きい。さらに2015年度税制改正で敷地200平方メートル以下の住宅地について更地の6分の1に軽減されている現行の固定資産税の特例が、隣接地などに危険が及ぶ場合などに更地並み課税が適用されるようになったことも、所有者に売却や改築、賃貸など空き家の利活用を促すとみられる。
また、大都市ばかりでなく、地方においても空き家ビジネスの可能性が生まれようとしている。安部政権が次の「アベノミクス」の目玉に据える「地方創生」には、地方移住者に対して空き家をリフォームして低家賃の賃貸住宅として提供する地方活性化策が盛り込まれた。その意味で、民間企業にとって空き家ビジネスは、まさに大きなビジネスチャンスに映ってくる。
しかし、中古住宅の価格評価がいまだ確立していない点に加えて、欧米に比べて遅れている中古住宅の流通など、空き家ビジネスが本格的な事業として成り立つまでには、飛び越えなければないハードルが高いのも現実だ。その意味で、空き家ビジネスを視野に入れる企業も、現時点で手探り状態での参入である事実は否めない。