メールや手紙、あるいはつきまとう様子を撮影したビデオなど、具体的な証拠があれば警察もすぐに動ける。日記やメモ類でもよい。逆に長期間ストーカー被害を受けているにもかかわらず、何も証拠が残っていないのは不自然と受け取られるだろう。

ただし、証拠を揃えて訴えても被害届が受理されない場合がある。これは警察の怠慢によるもので、背景には現場の警察官の多忙さがある。ストーカー規制法制定(2000年)のきっかけとなった「桶川女子大生ストーカー殺人事件」では、警察が被害者の家族に告訴の取り下げを要求したうえに告訴状を改ざんした。こうした事件が起きるのは結局、現場の警察官の人数が足りず、事件を処理しきれないからである。

では、本当に被害にあっているのに被害届が受理されないときはどうすればいいのだろうか。弁護士に相談するのも一つの手段だが、費用がかかるうえ、やはり証拠がなければ「難しい」と言われて終わりだ。

現実的な方法は、何度も警察へ足を運び、少しずつでも証拠を集めることだ。そうすれば警察官も「本当に困っているんだ」と認識し、協力しようと考えるからである。

なお、一般にありがちな勘違いは、被害届を出せば警察がすべての証拠を集めてくれるという思いこみ。だが、情報を一番持っているのは被害者であり、被害者が情報提供しない限り証拠は集まらない。警察と一緒に解決する姿勢を持ち、自助努力を尽くさなければ被害は救済されないのだ。

※すべて雑誌掲載当時 

(構成=宮内 健)