ぼっち化が虐待や介護鬱を生む

孤立してしまえば、介護を含めた日常生活の判断や処理はすべてひとりですることになります。要介護者が認知症の場合は、その対応で精神的にも追い詰められる。当欄でも触れたことがありますが、介護家庭で起こりがちだという虐待や介護鬱もこうした状況が引き起こしているのではないでしょうか。

ニュースで時折、介護疲れからの心中や殺人が報じられますが、孤立し誰にも相談できず、ひとりで悩みを抱え込んだ結果でしょう。親しくなり話をよく聞くようになった介護サービス事業者の方が「介護で怖いのは孤立です」と言っていましたが、わかるような気がします。

2013年末時点の要介護者数は580万人を越えています。全国の世帯数は約5000万世帯ですから、おおよそ10軒に1軒以上は要介護者がいることになります。介護状態であることを周囲に知られたくない、隠したいという気持ちもわからないではありませんが、今では当たり前のことと受け止め、厳しい状況にあるときは誰かにSOSを出すことも必要ではないかと思います。

どれだけ親身に話を聞いてくれるかはわかりませんが、役所には相談窓口もありますし、ケアマネージャーなどに悩みを打ち明けてもいいでしょう。知らない人に内情を話すのに抵抗があるというなら友人や知人がいるはずです。誰かに話を聞いてもらうことは、ガス抜きになりますし気が楽になります。介護の現状は解決できないかもしれませんが、悩みが軽減できるだけでも大分違うと思います。

仕事先で会った人と介護の話をすることがありますが、介護経験がある人や、今、介護をしているという人が結構います。そしてその多くが、知識不足で困ったことや精神的にきつくなったことを話します。

話してみれば実は共通の悩みであることも多く、その会話が救いになるケースもあるのではないでしょうか。介護で心がけたいのは孤立を防ぐこと。そのためには人とのつながりを大事にすることだと思います。

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