リーダーが陥りやすい5つの危険

実行部隊の指導者としてのリーダー(将帥)を、孫子はどのような形で描いているでしょうか。将帥の陥りやすい失敗点について、孫子は興味深い指摘をしています。

【将帥の陥りやすい5つの危険】
1.いたずらに必死になること(これでは討ち死にする)
2.なんとか助かろうとあがくこと(捕虜になるのがおち)
3.短期で怒りっぽいこと(みすみす敵の術中にはまる)
4.清廉潔白すぎること(敵の挑発に乗ってしまう)
5.民衆への思いやりを持ちすぎること(神経がまいってしまう)

(引用『孫子・呉子』守屋洋・守屋淳 プレジデント社より)

猪突猛進、勝ち目のない戦場でも必死になる将軍は戦死し、勇気をもって戦うことを知らない将軍は応戦すれば勝てる戦場でも、毎回捕虜になってしまう。ここで描かれる5つの失敗は、1つのことにこだわりすぎる、偏りすぎることから生まれる危険を指摘しています。バランスが取れていないことである程度上手くいく人は、逆にそれが弱点にもなるということでしょう。勝ちパターンが完全に固定されている人も、足元を掬われやすい。

では、孫子はどのような将軍を優れた人物として描いているのでしょうか。

戦場で柔軟性を失わず、君主に命令されたことを鵜呑みにするのではなく、自ら戦うべきとき、そうでない時を主体的に判断できること。結果として功績があっても名誉を求めず、敗北しても責任を回避しない。ひたすら人民の安全を願い、君主の利益をはかる。

ビジネスにおいても、仕事の本質から目をそらすことなく成果を追いかけ、悪戯に目立つことを避けて周囲の和をはかり、会社の利益に常に貢献する。このような人物こそ、企業社会における真に優れた将軍であり、国の宝(企業のエース)といえるのです。

5つの条件を元に健全な判断力を持ち、成果を出すために柔軟に攻めることができる人こそが、優れた将軍としてビジネスでも成果を出し続けているのです。

【関連記事】
なぜ「できる人」より「好かれる人」が出世するのか
決断力は心の問題 判断・作戦は頭の問題
なぜ、できない人ほど自分を過大評価するのか
孫正義は『孫子』から何を学んだのか
なぜ、個人の能力より組織の力が勝るのか