なぜ医者の発言を鵜呑みしてしまうのか
詐欺犯らは、高齢者を焦らせるために、まず相手の頭に「今日中に手続きをしなければ、お金を受け取れない」というルール(規定)を植え付ける。そのルールを信じ込ませるために、信頼のおける公的機関の人間を装って電話をかけるのだ。
このテクニックは、ハロー効果といわれる。
これは、何かの出来事を評価する際、ひとつの優れた(劣った)特徴に引きずられることで、その他の物事への評価が低下してしまい、すべてが優れている(劣っている)と判断してしまうことだ。
たとえば、医者や弁護士など尊敬されるような人から何かを言われると、無条件で相手を信頼し、その話を受け入れてしまいがちになる。また、CMなどでも人気のあるタレントが商品の紹介をすると、視聴者がその商品をとても良いものに感じてしまうのも、この効果である。
還付金詐欺では、このハロー効果とルール設定(期限など)を利用して相手の行動を支配する悪巧みだ。
一時期、闇金融の強引な借金取りたてが社会問題になったが、彼らが使っていたのも、支払期限を切り、焦らせて金を取ることだった。たとえば、お金を貸した数日後、電話をかけて「貸した金10万円を返せ」と迫る。しかし、そんなお金をすぐには用意できないと慌てる相手に対して、業者は「それでは利子分の数万円だけでも◯日後までに払え」と強い口調で迫る。
借りた側は期限を切られることで、ほかに回そうと思っていた生活費などの資金を、業者への支払にあてることになる。こうして、元金が返せないまま、利子だけを払い続けることになる。このように、焦らせることで、相手の時間を手中におさめ、自らの意図する方向へと導くことができる。還付金詐欺でも、ルールで相手の行動を縛り、焦らせることで金を出させることができたのである。