なぜ期限付きノルマは守ろうとするのか?
もちろん、通常のビジネスにおいては、うその話で相手の時間を奪う(制御する)などの行為は厳禁である。ただし「期間限定の販売です」「タイムセール」などと、販売会社が独自のルールを定めて、期限を切り消費者の購買意欲を掻き立てる方法はよくみかける。
消費者の目はこうした文言に釘付けとなり、自らの時間を割いて、購入するかどうかの判断をすることになる。まさに、消費者にルールを課して、相手の行動を支配する事例であろう。
この方法は、対外的だけでなく、社内向けにも使える。会社などでは、独自の社内ルールを決めて、組織の引き締めをはかることはよく行われる。
「今月末までに○○千万円の売り上げ目標にする」
こうした期限付きのノルマや目標もそのたぐいに入るだろう。何にせよ、時間管理というものはなかなか難しい。社員に期限設定しないで自由に仕事をやらせているとたいていパフォーマンスは落ち、組織としての士気も上がらずに、売り上げが下がることもある。それゆえ、上司が部下たちを一定のルールで縛ることが必要になってくる。
かといって、特にルールは詳細に明文化する必要もないケースもある。その代わり、売り上げをあげるために「自分たちがどうすべきか、考える」「『なぜ』を繰り返す」ことを社内の「文化」(社風)にしている。細かくルール決めするのではなく、いわば「規範」を定めるのだ。そうやって社員一人ひとりが考える習慣ができ、自らにルールを課すことができるようになったら、その組織は強い。
前出のように詐欺犯が実践する「ルール支配」で焦りを生み出すやり口は、相手にプレッシャーを与え冷静な判断力を奪う。しかし、企業内で有効利用すれば、社員の頭をフル回転させて、新しい何かを生み出す力も持っている。決してマイナスばかりではない。
知り合いのライターにも締切り間近となると、俄然、集中力が増し、執筆のスピードが上がる人もいる。焦りとは人によってはカンフル剤にもなりうる。ただし、プレッシャーに弱い人もいるので、さじ加減が必要になってくる。