現金化まで150日! 原油の旅路は
さて次に、どこでもいいのだが、たとえばサウジ産の原油がどのようにして日本でガソリンになるのかを考えてみよう。
日本の石油会社=A社はサウジ国営石油からFOB(積地渡し)条件でサウジ原油を購入している。サウジ原油の価格は、間接的だが、WTI原油価格の動向によって高くなったり安くなったりする。A社は、長期用船しているVLCC(Very Large Crude oil Carrier)と呼ばれる超大型タンカーでサウジから日本へ運んでくる。海上運賃がかかる。また、タンカー沈没等のリスクがあるので、貨物保険をかけている。保険料がかかる。20日ほどの航海の後、日本の製油所にタンカーが到着し、荷揚げする。一度、原油タンクに入る。
原油タンクで在庫される期間は通常60日程度だ。つまり、日本に到着後、60日くらい経ってから精製される。精製費がかかる。生産されたガソリンは製品タンクで在庫される。しばらくして地方の油槽所に運搬される。油槽所の場所によってバージと呼ばれる小型タンカーの場合もあるし、鉄道貨車や大型タンクローリーの場合もある。油槽所から小型タンクローリーでガソリンスタンドに運搬される。それぞれ運送費がかかる。保険もかかっている。
このような経過を経て、ドライバーが運転してきた車に給油されるという訳だが、ガソリンスタンドの運営コストもかかる。ざっと計算して、生産地を離れてから給油されるまで150日くらいが経っている。A社がサウジ国営石油に支払うのは、通常船積み後30日目だから、約120日間の資金負担に関わる金利もコストだ。当然のことだが、製油所、油槽所などの設備投資の償却コストも織り込まなければならない。あちらこちらで各種各様のコストがかかっているものだ。
では、ガソリン価格はどのように推移して来ているのだろうか。
総務省統計局のデータによると、昭和41年から平成25年までの、東京都区部小売価格の推移は次のグラフのようになっている。イラン革命後の原油価格高騰時にリットル当たり177円、WTIが147ドルの最高値を記録した頃には史上最高の182円を記録している。このグラフには示されていないが、2013年12月以降は徐々に上がり始め、消費税増もあって2014年4月には163円となり、7月に168円をつけて、8月、9月は166円で推移している。
このように、今年夏の168円は決して史上最高値ではない。恐らく我々の記憶のどこかに過去の「177円」や「182円」が残っているので、最近のガソリン価格高騰にもパニックにならずに済んでいるのだろう。
最近の価格、166円/リットルを、為替100円/ドルとして計算すると、263.91ドル/バレルになる。バレル当たり100ドルの原油が263.91ドルのガソリンとなっている勘定だ。先ほど見たように、諸々のコストが掛かっているのは分かるが、それにして差額が大きすぎる。
なぜだろうか? ガソリン価格の構成はどうなっているのだろう?