力と力でせめぎ合う戦国時代。黒田官兵衛は並外れた智謀で世を動かした。彼の知略、奇策、説得術から現代のビジネスマンは何を学ぶべきか。官兵衛通の、東京電力取締役会長 數土文夫氏、企業再生請負人 冨山和彦氏、京都造形芸術大学教授 松平定知氏が語る。

人心掌握術の基本

写真左から:京都造形芸術大学教授 松平定知氏、東京電力取締役会長 數土文夫氏、企業再生請負人 冨山和彦氏

【松平】官兵衛は、織田に謀反を起こした荒木村重に思いとどまるよう説得するため、単身村重の城である有岡城に向かいました。ところが、直接の上司の小寺政職が村重側についたため、説得どころか1年間も牢屋に入れられ、音信不通となってしまいます。しかし、栗山善助ら家臣は、官兵衛の安否すらわからない状況であるにもかかわらず、「連署起請文」を記して官兵衛に忠誠を誓いました。彼のこの人望をどのように考えますか。

【冨山】参謀には一般的に、血も涙もない嫌なヤツのようなイメージがあります。しかし、実際には、アルフレッド・マーシャルが「クールヘッド、ウオームハート」と言ったように、頭はクールでなければならないが、心は温かくないと人はついてきません。官兵衛は、それをよくわかっていたのでしょう。